そうですね。後から考えると、意図して「監督落合」を演じていたのかもしれないと思うときもあります。

 例えば、落合さんには「マスコミ嫌い」や「無口」といったイメージが世間にあると思います。しかし、現役時代に巨人の4番バッターを務めていたときから、落合さんの自宅には毎朝記者が訪れて、タクシーに同乗させて球場に行っていました。自宅に上げてお茶を飲んでから一緒に球場に行っていたこともあります。

 そう考えると、落合さんはマスコミ嫌いではありません。本当にマスコミ嫌いなら、自宅に記者を上げることはあり得ませんよね。

 それに無口な人でも決してないのです。なのに、なぜ無口だと捉えられるのか。

 それは、絶対にしゃべらないと決めたら、意図的にしゃべらないことができる人だからだと思います。

 あくまで推測ですが、チームをマネジメントするために、そのイメージが適しているから、意図的にそうしていたこともあり得るでしょう。

――著書で一番お気に入りのシーンを教えてください。

 落合さんを一番分かりやすく表しているのは、07年の日本シリーズにおいて、完全試合を継続していた山井大介投手を8回で降板させたところです。