誤解3:「ホームレスって年配の男性の問題ですよね」
ここ数年、ホームレス問題に変化の兆しが見られる。
長らく愛称として使っている「おっちゃん」という言葉ではくくれないくらい、相談者の属性が多様化しているのだ。
若い人が増えている、というと、それこそ「働き口なんて……」と言われるが、実はそうではない。
たとえば、最近増えている20代~40代の相談者の場合は、Homedoorで少し働いてお金を得て、携帯電話を入手して面接に行けば、比較的すぐに仕事を見つけることができる。
しかし、焦って見つけたその仕事は、結局雇用期間が短いものや労働環境が劣悪なものであることも多く、しばらく経つと契約期間が終わってしまったり環境に適応できなかったりして仕事を辞めてしまい、再びホームレス状態になってしまう。つまり、貧困を再生産していることになるのだ。
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そして、注目しなければならないのは、「家を失う」に至る経路がますます多様化していることだ。2019年に個室で2週間まで無料で泊まれるシェルター「アンドセンター」を開所してから、それまでは拾えなかった多様な相談が寄せられている。
児童養護施設を退所せざるを得なかった18歳、19歳の若者が、一時的に泊まれる場所を探しているという相談。
LGBTへの偏見から、住まいも仕事も失ってしまったという相談。
DVから逃げてきた女性を一時的に宿泊させてほしいというDV支援団体からの相談。
難民申請者を一時的に受け入れてほしいという難民支援団体からの相談。
他にもさまざまな要因で「家を失って」しまう。特に、私と同い年の女性が相談に来たときには、本当に考えさせられた。
「仕事を探したいけれど、履歴書に書く住所がなくて仕事を見つけられなかったんです。家を借りようと思っても、お金がなくて」
所持金が32円で、自転車で4時間かけてHomedoorまで来てくれた彼女の言葉に、同い年でも生まれる境遇が違うだけで、これほどまでに生きづらくなってしまうのかと思わざるを得なかった。
この負の連鎖を早く止めるには、やはり「誰もが何度でも、やり直せる社会」をつくる必要がある。
雇用は流動化し、あらゆることが不確実になった現代では、誰もがふとした瞬間に転落してしまう可能性を持っているのだ。
もしそうなっても、再挑戦が簡単にできるようなセーフティネットがあれば、日本社会全体にも活力をもたらすに違いない。