ネガティブなことから目を背けず失敗を回避する

――今まで平尾さんは、成功者としての華やかな一面だけフォーカスされてきましたが、失敗のリスクヘッジにしてもメタ認知にしても、見えないところですごく泥くさい努力をされていますよね。

平尾 私はあまり失敗していない起業家だと思われているようなのですが、たくさん失敗しているんです。痛い思いもたくさんしています。でも何度失敗しても、そこから軌道修正して巻き返せるように努力しています。そういう意味では、失敗とか逆境をバネにする力は人一倍あるかもしれません。それも「別解」で解決策を導き出す起業家思考のひとつの強みと言えるでしょう。

 成功論者のような見方もよくされるんですが、どちらかというとネガティブなことを考えているほうだと思います。私は昔から日記を書き続けていて、仕事の失敗や悪かった点などネガティブな要素を思いつく限り書き出しているんですね。その内容を週で振り返り、月で振り返り、4半期で振り返り、1年で振り返る作業を続けています。

 その中で、なぜ失敗したのか、どうすれば成功するのか、他に方法論はないのかと考えて、修正しようがないものはシステマティックに省いていきます。失敗した仕事を修正できるかどうかは、「3ヶ月前に戻れたらどうするか?」と自問してみるとわかりやすい。その問いに答えられたら修正可能でしょう。もし即答できなければ何度やっても失敗します。

 人生でバッターボックスに立てるチャンスはそう多くはありません。失敗して、信用も自信も失ってしまったとき振り返りもせずにいると、2度とチャンスは巡ってこないかもしれません。でも、起業家の思考法を身に付けた人は、自分なりに失敗しない方法論を導き出し、「次はこのような打ち手で成功させてみせます」とプレゼンして次のチャンスをつかめます。だからこそ、失敗する前提で対策を立てたり、振り返る習慣を身につけることが大事なのです。

【第1回】「正解がない時代」でも成果を出せる人たちの共通点、「別解力」とは?
【第2回】「そんなの誰でも思いつく」と言われないように知っておくべき「別解」の生み出し方
【第3回】誰でも解くべき問題を発見できる「8M」とは

「失敗しても、学びになればいい」と思っている人は、いつまでも前に進めない理由平尾 丈(ひらお・じょう)
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。
「失敗しても、学びになればいい」と思っている人は、いつまでも前に進めない理由