実は気をつけるべき「投資をしないリスク」

コロナ禍の時代が長く続き、世の中では「投資ブーム」が起こっているそうです。確かに日本の経済はいつになっても良くならないし、会社のお給料もなかなか増えないし、「老後2000万円問題」とやらも気になるし、今のうちに何かはじめなきゃ、と思っている人は多いはず。でもじゃあ、一体何からはじめればいいのか? すぐにはわかりませんよね。知識もないのに飛び込んで、だまされるのも嫌だし…。そんなあなたに頼もしい助っ人が現れました。「セカニチ」のハンドルネームで活躍中の実業家・南 祐貴さんです。初の著書である『世界一面白くてお金になる経済講座 知識ゼロからはじめる投資のコツ』(ダイヤモンド社)で、誰にでもできる最も簡単で最も安全確実な投資法を説き、話題を集めています。彼が説く、世界一「安全確実」にお金持ちになる方法とは?(イラスト/ゆん)

1940年のおにぎり1つの価格はいくらでしょう?

今はコンビニでおにぎり1つ100円で買えますが、約80年前は現在の1/1000~1/2000の物価だと記録が残っています。1940年のおにぎり1つの価格は5銭(0.05円)だったのです。つまり当時1000円持っていた人は少なくとも2年分以上の食費に当たるお金(約200万円の価値)を持っていたことになります。

もし当時1000円の現金をタンスに入れたまま約80年経ったら、現代は1000円で何が買えますか? 2年分どころか、ランチ1回して終わりですよね。これが投資をしないリスクです。物価の上昇による損失=インフレリスクと呼びます。もし1940年にタンスに入れずに株や不動産などの投資に回していたら物価上昇と共に資産価格も上昇し、手元の1000円の価値が消滅することはありませんでした。つまり行動しないだけで、あなたは機会損失という名の損を食らっているのです。

ここで皆さまは「おにぎりの価格が2000倍になったっていうけど…今後も本当にそうなるの?」と疑問に思ったことでしょう。確かにこの30年ほど、日本はデフレの時代が続いています。しかしこれからの日本ではお金の価値が下がるリスクが高いということも説明していきましょう。

私たちが毎日使っている「お金」とは、日本銀行が発行している「券」です。手元にお札を用意してください。じっくりお札を見ると必ず「日本銀行券」と書いてあることでしょう(日本銀行=ニッポンギンコウ/ニホンギンコウと呼び、ニチギンと略します。日本の中央銀行です)。

実は日銀が1万円札を発行する原価は約20円です。お札は色んな人の手元をぐるぐると旅をするので、約5年ほどでボロボロになります。日銀は古い券を回収して廃棄し、そして20円でまた新しい券(1万円札)を発行します。ただの紙の券なのでいくらでも刷ることができます。

日銀が供給する資金の量(マネタリーベース)は増え続けており、直近10年で5倍以上になっています。社会に供給される資金の量が増えると(理論上は)モノの値段も比例して上がります。

なんと今後も日銀はお金を供給し続けます。なぜなら物価を上げて過去の借金(国債)を薄めたいからです。例えば100兆円の借金があったとしても、社会全体の物価を2倍に上げることができれば、100兆円の借金の価値が実質的に半分になるからです。

このように世界各国の中央銀行は金融緩和と呼ばれる手法で、まるで水道の蛇口を開けたり閉めたりするように、お金の量・物価・景気を調整しています。国は国債で好きなだけ借金ができるのですが、ジンバブエというアフリカの国は水道の蛇口が閉まらなくなってしまい、1つのパンを買うのに3000億ジンバブエドルが必要になりました。このように通貨の価値が暴落して国の経済が崩壊することをハイパーインフレと呼びます。中央銀行はお金を発行しまくることで物価をムリヤリ上げることもできますが、ジンバブエのようにならないよう経済力と物価を健全に上げようとしています。

日本国においても、これから長期的視点ではお金の供給量が増え、モノの値段が上がっていくでしょう。つまりお金の価値が下がることを意味します。実は2021年から世界中で急速な原油高となっており、ガソリン代・電気代・半導体・鉄・木材・化学品・小麦・油脂・砂糖・肉など、人類が必要とする生活必需品の値上げが世界中で起きています。これはまだ序章で、値上げの波は2022年以降もっと大きくなっていきます。そのうちおにぎり1つの価格が500円になるかもしれません。物価が5倍になったとしても、あなたが投資をしていれば金融資産も5倍になるので、インフレリスクを避けることができます。現状維持でとどまるとインフレによって損をします。「投資しないリスク」を早く理解することが重要なのです。

南 祐貴(みなみゆうき・セカニチ)
実は気をつけるべき「投資をしないリスク」

Koru-workers株式会社 代表取締役。
1989年東京都調布市生まれ。2012年に大手広告代理店に入社、約6年勤めて、自由になるため退職・起業。クラウドファンディングなどで資金を集めて高輪ゲートウェイ駅近くに宿泊施設「Koru Takanawa Gateway」をオープン。同時に、経済や投資をわかりやすく解説する「#世界最速で日経新聞を解説する男(セカニチ)」を開始。生放送コミュニティ・オンライン学習サービスの「Schoo」では、国内最大級6200本の授業から「ベスト授業&ベスト先生」の2冠に輝く。本書が初の著書。各SNSで毎日情報発信。インスタグラムのフォロワーは2万人以上。『世界一面白くてお金になる経済講座』が初の著書。