F1が「走る試験場」といわれる理由
杉原:ところで、RDSはF1の「スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ」とオフィシャルパートナー契約をしています。
F1って、とてつもないエコレースだって知っていますか。
星:どういうことでしょうか。
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長
経営者、教育者、論理学者
1977年生まれ。スタンフォード大学哲学博士。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。教育テクノロジーとオンライン教育の世界的リーダーとして活躍。コロナ禍でリモート化が急務の世界の教育界で、のべ50ヵ国・2万人以上の教育者を支援。スタンフォード大学のリーダーの一員として、同大学のオンライン化も牽引した。スタンフォード大学哲学部で博士号取得後、講師を経て同大学内にオンラインハイスクールを立ち上げるプロジェクトに参加。オンラインにもかかわらず、同校を近年全米トップ10の常連に、2020年には全米の大学進学校1位にまで押し上げる。世界30ヵ国、全米48州から900人の天才児たちを集め、世界屈指の大学から選りすぐりの学術・教育のエキスパートが100人体制でサポート。設立15年目。反転授業を取り入れ、世界トップのクオリティ教育を実現させたことで、アメリカのみならず世界の教育界で大きな注目を集める。本書が初の著書。
【著者公式サイト】(最新情報やブログを配信中)
杉原:F1は大量の燃料を使うと誤解している人が多いのですが、実際は正反対です。たくさん燃料を積んだら遅くなるので、いかに少ない燃料で時速300キロのスピードを出して何百キロもの距離を走るか、技術の粋を尽くしてそれを追求するのがF1なんです。
星:なるほど。
杉原:F1のマシンから排出される二酸化炭素は実は非常に少なく、F1興業全体の二酸化炭素排出量の中で、マシンが排出するのは0.7%にすぎないといわれています。
星:意外ですね。
杉原:このように、F1には非常に高度なテクノロジーがふんだんに使われているのですが、それらの中には一般社会に生かされているものが数多くあります。F1が「走る試験場」と言われるゆえんです。
星:たとえば、どのような例がありますか。
杉原:1980年代後半に、F1で、パドルシフトというものが開発されました。
ステアリングの近くにあって、手動でシフトチェンジができるものです。
これは速く走るために開発された技術ですが、この技術が一般社会に応用された結果、足が不自由な方たちが運転できるようになりました。
それまで、アクセルとブレーキは足で操作するものという固定観念があったんですが、「手でできるんじゃないか」というパラダイムシフトが起こったわけです。
星:面白いですね。
杉原:それと同様に、伊藤選手と僕は、パラリンピックを「走る試験場」だと考え、車いすレースに取り組む中から、一般社会に何を落とし込めるかを追求しました。
その結果が「身体解析」。自分のパフォーマンスを可視化する試みです。