「社内プレゼン」は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。どんなによいアイデアがあっても、組織的な「GOサイン」を得なければ一歩も前に進めることができません。そのためには、説得力のあるプレゼンによって決裁者を説得する技術が不可欠なのです。
そこで役立つのが、ソフトバンク在籍時に孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取り、独立後、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。
本書では、孫正義氏をはじめ超一流の経営者を相手に培ってきた「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、前田鎌利氏が孫正義氏にプレゼンをすることで学んだ、最も基本的かつ本質的に重要なポイントをご紹介します。

孫正義氏が“やり直し”を命じた<br />「社内プレゼン」の問題点とは?写真はイメージです。Photo: Adobe Stock

孫正義社長に鍛えられた「プレゼン・スキル」

 社内プレゼンは、ビジネスパーソン必修の基本スキルです。

 どんなに練り上げた企画や提案も、経営者や上司からGOサインを得なければ、一歩も先に進めることができません。そのためには提案内容をわかりやすく伝え、決裁者を納得させるプレゼン・スキルが必要不可欠だからです。

 ところが、これが苦手な人が多いのではないでしょうか?

 何を隠そう、私自身がそうでした。数限りない失敗を重ねつつ、試行錯誤しながら社内プレゼンのスキルを磨いてきました。

 特に、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)に勤めるようになってからは随分と鍛えられました。何しろ、トップは孫正義氏ですから、意思決定のスピードが速い。

 次々と降りてくる課題への対応策を考えて、プレゼンをしなければなりません。しかも、会議に付議される案件が多いため、一件のプレゼンに与えられるのは3~5分。その場で「1分でやるように」と指示されることもありました。

 だから、簡潔で的を射たプレゼンができなければ、それだけでアウト。鋭い指摘を浴びせられて立ち往生したこともあります。特に、孫社長を前にプレゼンするときには、強い緊張を強いられたものです。しかし、だからこそプレゼン・スキルを磨き上げることができました。

社内プレゼンは「シンプル&ロジカル」に徹する

 では、社内プレゼンの正否を決定づけるのは何か?

 資料です。私は、社内プレゼンは「資料(スライド)で9割決まる」と考えています。

 決裁者が意思決定するために必要な情報が、わかりやすく説得力をもって展開される資料をつくることができれば、当日は、それに沿って話すだけでOK。資料の内容に自信があれば、話し方にも自然と自信が備わります。その意味では、「資料が10割」と言ってもいいほどです。

 そして、社内プレゼン資料の最大のポイントは「シンプル&ロジカル」であることです。

 例えば、孫正義氏が最も嫌ったのは「要領を得ないプレゼン」でした。ダラダラと何が言いたのかわからないプレゼンをしている社員に対して、そのプレゼンを中断させて、やり直しを命じるのを何度も目撃しました。

 これは当然のことで、孫正義氏に限らず、経営者は多忙を極めています。そして、限られた会議時間のなかで、いくつもの案件に対して意思決定をしなければなりません。だから、「要領を得ないプレゼン」は大迷惑であり、それだけで却下するに値するのです。

「意思決定」に必要な情報は何か?

 もちろん、プレゼンする側が、その案件に関する情報を漏れなく正確に伝えようとする気持ちは理解できます。

 しかし、「あれも大事、これも大事」と情報を盛り込みすぎて、20~30枚にも及ぶ資料をつくってしまえば、それだけで、決裁者は悪印象をもちます。そして、そのような資料をもとに展開したプレゼンが、理解を得ることは期待できないでしょう。

 社内プレゼンのゴールは「GOサイン」を出してもらうことです。ですから、社内プレゼンで重要なのは「抜け漏れなく情報を伝える」ことではなく、「決裁するために必要な情報」を絞り込んで、それを適切に伝えることなのです。

 だから、社内プレゼンは3分で終えることを前提に、5~9枚のスライド(本編スライド)でロジックを組み立てることを心がけるべきです。

 これは、決して難しいことではありません。

 なぜなら、社内プレゼンのロジックのパターンはたった1つだからです。「1 課題(どんな課題があるのか?)」→「2 原因(その課題が生まれる原因は何か?)」→「3 解決策(その原因を解消する具体策の提案)」→「4 効果(提案内容を実施した場合の効果予測)」。この4つをきちんと示すことさえできれば、決裁者はGOサインを出します。

 そして、このロジック展開に不要な細かい枝葉はそぎ落として、「意思決定」に必要な要素だけを並べればいいのです(詳細情報はアペンディックスとして用意し、決裁者から質問があれば示します)。

 この基本をしっかり押さえるだけで、あなたの社内プレゼンは見違えるほどに変わります。そして、「一発OK」を次々と勝ち取ることができるようになるに違いありません。

(本稿は、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)