「社内プレゼン」は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。どんなによいアイデアがあっても、組織的な「GOサイン」を得なければ一歩も前に進めることができません。そのためには、説得力のあるプレゼンによって決裁者を説得する技術が不可欠なのです。
そこで役立つのが、ソフトバンク在籍時に孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取り、独立後、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。
本書では、孫正義氏をはじめ超一流の経営者を相手に培ってきた「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、説得力のあるプレゼンができる人が認識している、「理解」と「納得」をめぐる人間心理のメカニズムについて解説します。
「理解」と「納得」のメカニズムとは?
プレゼンで大切なのは、「相手の理解・納得を得る」ことです。
「自分が伝えたい」ことを伝えるのではなく、相手の「理解・納得」を得ることに徹するのが、プレゼンで成功する第一歩なのです。
ただし、ここで注意すべきことがあります。
それは、「理解」と「納得」は異なるということです(下図参照)。
実際、「納得」という言葉を辞書でひくと、「他人の考えなどを理解して受け入れること」と書いてあります。
つまり、プレゼンを成功させるためには、第1に「自分のアイデア・主張の内容を理解してもらうこと」、そして、第2に「理解してもらったアイデア・主張を受け入れてもらうこと」という2つのステップを踏まなければならないということ。
要するに、「理解」なくして「納得」はなく、「理解」されたからといって「納得」されるとは限らないということです。
「伝える内容」を絞り込むことが大切
では、「理解される」ためには、どうすればよいのでしょうか?
答えは簡単で、「シンプルなプレゼンにする」ことに尽きます。アイデアを練り上げるためには、さまざまな情報を集める必要がありますが、そのすべてを説明しようとすると複雑でよくわからないプレゼンになります。ですから、「伝える内容」を絞り込むことが最大のポイントになるのです(下図参照)。
例えば、業務効率化のためにITシステムの導入を提案するとしましょう。その場合に、システムの詳細について「あれもこれも」説明しようとすれば、その内容は複雑なものにならざるを得ないでしょう。
しかし、決裁者が意思決定をするうえで重要なのは、「現状の業務フローに多くの無駄があるという事実」「それを解決するために最適なITシステムの概要」「費用対効果」などの情報です。
つまり、決裁者がシステムについて知るべきなのは、「そのシステムで問題が解決できるかどうか」という一点であり、「システムの詳細」を伝える必要はありません。このように、相手の立場に立って、「伝える情報」を絞り込むことが、「理解しやすいプレゼン」にするうえでは大切なことなのです。
「疑問」に的確に応えられるように準備をする
ただし、すでに述べたように、「提案内容」を理解してもらっただけで、「納得」してもらえるとは限りません。
例えば、決裁者によっては、「ITシステムを入れることで組織変更が必要になるのか?」という疑問をもつかもしれません。
あるいは、「別のシステムのほうが適切だったりはしないか?」「ITシステムによって取引先の業務に影響は出ないか?」といったことが心配になる人もいるかもしれません。
こうした疑問に説得力のある回答ができなければ、「君の提案内容は理解したけれど、GOサインを出すことはできない」という話になりかねないわけです。
ですから、「納得」を勝ち得るためには、想定しうるあらゆる「疑問」「質問」に即座に回答できるように準備しておく必要があります。そして、プレゼンのあとの質疑応答において、適宜、資料を示しながら、相手の「疑問」「質問」に説得力のある回答を伝えることができなければいけないのです。
このような準備をすることが、社内プレゼンの資料作成術の「本質」なのです。
(本稿は、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)