「3本の矢」に支えられ
日本経済は緩やかな回復へ
2012年12月26日に、自民党と公明党の連立による安倍晋三政権が成立した。金融市場では、安倍新総理の経済政策(いわゆる「アベノミクス」)への期待感などから、急速な円安・株高が進行している。
東京大学大学院修士課程修了。1989年、日本興業銀行に入行。同行調査部エコノミスト、みずほ証券エクイティ調査部シニアエコノミスト、メリルリンチ日本証券チーフ債券ストラテジストなどを経て、現職。財務省「関税・外国為替等審議会」の委員をはじめとする様々な公職を歴任。過去に各種アナリストランキングで、エコノミスト、為替アナリストとして合計7回1位を獲得している。「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)レギュラーコメンテーター。著書に『日経プレミアシリーズ:消費税が日本を救う』(日本経済新聞出版社)など
本稿では、2013年の日本経済を展望すると共に、現在、金融市場参加者にとって最大の関心事である「アベノミクス」について考えてみたい。
2013年の日本経済は、メインシナリオとして緩やかな回復に向かう見通しである。
日本経済は海外経済の悪化などを背景に、2012年3月を「山」に景気後退局面入りした可能性が濃厚である。過去の日本経済の回復局面を検証すると、1990年代以降、景気回復のドライバーが「財政・金融政策」から「輸出」へと明確に変化していることが確認できる。今後の景気後退局面でも、海外経済の回復などによる輸出の増加が、日本経済底入れの発火点となる可能性が高いだろう。
今後の日本経済は、様々な景気下振れリスクを抱えつつも、メインシナリオとして、①米国・中国経済の持ち直し、②震災に伴う「復興需要」、③日銀の追加金融緩和、という「三本の矢」に支えられて、2013年以降、緩やかな回復軌道をたどる公算である。
なお、2013年の日本経済のリスク要因としては、①「欧州ソブリン危機」の深刻化、②日中関係の悪化、③米国の「財政の崖」、④地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、の4点に留意が必要となるだろう。