大企業とベンチャー企業の協業が失敗する理由

 近年、オープンイノベーションという言葉がバズワードになっていることもあり、事業の立ち上げに向けて大企業がベンチャー企業と手を組む事例が増えているが、実態を見るとその多くが事業化に至らないまま頓挫している。

 価値を共創するために始めたはずのプロジェクトが、大企業側が「プログラムをこなすだけ」「投資するだけ」という姿勢になっていくことがその主な原因である。実際に有望なベンチャー企業のなかには「大企業のアクセラレーションプログラムや政府プログラムから距離を置く」と公言する企業も出てきており、大企業の「オープンイノベーションごっこ」と揶揄されることもある。この状況が続けば、ますます日本企業からはイノベーションが生み出されにくくなってしまう。

 また、大企業特有の傾向として、各ステークホルダーとの間に存在するしがらみや、経営の重要な部分に外部リソースを起用することへの抵抗感も根強い。

 では、このような大企業のもつ難しさを乗り越え、早期に具体的な成果を創出する事業開発に挑むにはどうしたらよいのか。(2)ビジネスプロデュースを推進していくうえで、「目的」「ヒト」「マネジメント」「目標」の4つの観点から考えてみる(図表2)。

<目的>未来の顧客を見据えて既存事業のディスラプションに向き合う

 日本の大企業において、創業者は未来の顧客を志向し、既存事業の破壊に挑んできた歴史があるが、創業者の引退、組織の拡大、ステークホルダーの複雑化が進むと、責任の重さが増し、リスクを取りにくくなる。結果として、スピーディな新規事業創出が難しくなり、イノベーションが起こりにくくなる。そのため、事業開発の取り組みでは、既存事業とのシナジー追求もしくは“飛び地”領域の探索を目的としがちであるが、創業時代の精神に立ち返り、あくまでも未来の顧客を見据えることで、既存事業を破壊する可能性のある領域にも向き合うことが重要である。