インプットではなくアウトプットのKPI設定を
<ヒト>“聖域なき”社外活用
みずから胆力をもって試行/実践し、新たな解にたどり着くタフネス(精神的な強さ)を有するルールブレイカー人材が、強いリーダーシップをもって推進することが理想的だ。だが、そのような人材は自分で起業したり、実力主義のスタートアップや外資系企業に所属したりする昨今において、大企業にとっていかに社外の人材を活用し、コラボレーションを促進するかが課題である。
現実には、慣例としがらみが原因で外部専門家を“スポット的に”活用するに留まっていることが多い。“センミツ(千に3つ)”とも呼ばれる新規事業の成功確率を考えれば、社内の組織や人材に聖域を設けず、社外起業家と連携することにより、徹底した実力主義で、途中交代も辞さない緊張感をもったチームを編成することが成果をもたらす。
<マネジメント>“VC(ベンチャーキャピタル)発想”でのマネジメント・積極的なアセット/リソース活用
新規事業チームと自社経営陣との関係性において、上司・部下もしくは上位者・下位者という関係性から抜け出せず、投資判断に加えて指導もする経営陣、役員の意向や会社ルールから指導する(ブレーキをかける)部長級、指示を受けて手を動かす実働部隊といった構造になり、新規事業開発のためのチームとして機能していないことがある。
そこで目指すべきは、VCとスタートアップの関係のように、役員クラスで構成される投資委員会は投資判断にフォーカスし、経営チームは関連部門などからの加速支援を取り入れながら実働と責任の両方を担い事業開発に邁進する、というシンプルかつ権限移譲が進んでいる体制である。
<目標>インプットではなくアウトプットのKPI設定
イノベーション創出におけるKPIとして、ベンチャー企業とのコンタクト数や協業件数・投資額などのインプットを設定することがあるが、インプットをKPIにすると、ベンチャー企業との関係で“会いっぱなし”や“投資しっぱなし”といった状態になり、将来のパートナーを失うこともある。あくまでも成果を創出することにこだわって、アウトプット(年間での有償PoC<概念実証>のローンチ件数など)をKPIにすることが肝要である。
ここまで、大企業にイノベーションのエンジンを組み込むための「ビジョニング」「ビジネスプロデュース」について簡単に述べたが、書籍『パワー・オブ・トラスト』では、それぞれの手法を詳しく解説するとともに、3つ目のポイント「エコシステム」についてM&Aを中心に紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。