ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。大人の教養として世界の国々を知ろうと思った時におすすめ1冊が、新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)だ。世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。本書から特別に一部を抜粋して紹介する。
バルト三国はどんな地域?
バルト三国は、ヨーロッパ北東部のバルト海沿岸に位置し、北から順にエストニア、ラトビア、リトアニアと並ぶ国々を指しています。
かつて氷河に覆われていたこの土地は、氷河の浸食を受けて地表が削られたため、全体的になだらかな低地が広がり、多くの湖沼や湿地が見られます。とくにリトアニアには、3000に及ぶ湖があります。
国土のほとんどが亜寒帯に属し、夏は涼しいです。内陸ほど大陸性の気候となり、冬の寒さは厳しくなります。
エストニアとラトビアでは国土のおよそ半分が、リトアニアではおよそ3分の1が森林に覆われ、とくに冷涼なエストニアやラトビアでは針葉樹が多く見られます。
3カ国200万人が参加した「歌う革命」
歴史的に、エストニアやラトビアは北ヨーロッパ諸国やドイツと、リトアニアはポーランドとのつながりが深く、また3カ国ともロシアと深く関わってきました。
1940年にバルト三国がソ連に併合されると、近隣から多くの移民が流入し、バルト三国の民族構成は大きく変化しました。
このため、しだいに元々のこの地域にいた住民の文化を守ろうとする動きがバルト三国内で活発になり、1980年代後半の独立運動を後押しする結果となりました。
1989年、エストニアの首都タリンから、ラトビアの首都リガを通りリトアニアの首都ビリニュスまでの約600kmを、200万人超の人々が手をつないで「人間の鎖」をつくり、歌を歌うことで独立を訴え、1991年に独立を成し遂げたことから「歌う革命」として語り継がれています。
その後3カ国ともに、NATO、EU及びOECDに加盟しました。通貨もユーロで、ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可するシェンゲン協定加盟国です。
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)