本田健 絶賛「すべての幸せがこの1冊に詰まっている!」
『92歳 総務課長の教え』の著者で、大阪の商社に勤務する92歳の玉置泰子さん。「世界最高齢の総務部員」として、ギネス世界記録に認定された現役総務課長だ。1956(昭和31)年の入社から総務一筋、勤続66年。「私に定年はない。働けるかぎりは、いつまでも頑張る!」と生涯現役を誓う“世界一の先輩”が、長く幸せに働く63の秘訣を手とり足とり教えてくれる。

【92歳の現役課長が教える】<br />マリリン・モンローを救い<br />レディー・ガガがタトゥーにした<br />詩人・リルケの教え鳴田小夜子(KOGUMA OFFICE)

夜、自分と向き合って考えてみる

【前回】からの続き

私が若い頃、戦後の焼け野原からはじまった日本は貧しく、生きるのに懸命でした。だから、生きるためには、働かなければならないという必死の思いがありました。

いまのように、やりたいことを仕事にするという恵まれた考えはなかったのです。日本が豊かになったのはよいことですが、一方で「やりたい仕事が見つからない」という悩みを抱えている若者もいるようです。

そんな若い世代には、私が好きな詩人、ライナー・マリア・リルケの『若き詩人への手紙』という本を読んでみることをおすすめします。この本は、悩める若き詩人の求めに応じて、リルケが送った手紙をまとめたものです。

リルケは、「誰もあなたに助言したり、手助けしたりすることはできない。外に眼を向けるのではなく、自らの内へ入りなさい。夜のもっとも静かな時刻に、私は書かなければならないかと、自分自身に尋ねてごらんなさい」と書いています。

リルケのファンは著名人にも多く、あのマリリン・モンローは、「もしリルケの『若き詩人への手紙』を読まなかったら、頭がおかしくなっていただろう」と語っています。レディー・ガガは、ドイツ語のリルケの詩の一節をタトゥーにしているそうです。

「やりたい仕事が見つからない」というのなら、リルケのアドバイスに従って、夜、一人静かに瞑想しながら突き詰めてみるのもいいでしょう。

「やりたいこと」も「やりたい仕事」も、誰かが教えてくれるわけではありません。答えは自分の心のいちばん深い場所にあるのですから、心を鎮めて孤独に問い続けるほかないのです。

一晩考えたところで、結論は出ないかもしれません。結論に至るまで数週間、数ヵ月かかるかもしれません。それくらい自分の心と向き合って考えてみるからこそ、「やりたいこと」「やりたい仕事」が見つかるのでしょう。

静かな夜を幾夜も過ごした挙げ句、たとえ何も見つからなかったとしても、それはそれでいいのです。

少々哲学めいてしまいますが、生きている限り、「いまを生きる」ということが、あなたが最低限やりたいことです。そして明日になれば、また「いまを生きる」と思う。そのくり返しでもいいのです。

なぜなら、生きているということは、それだけでも十分素晴らしいことだからです。私は、戦中戦後を生き抜いて92歳になり、つくづくそう思います。

生きていることは素晴らしいと気づいたら、「いまを生きる」に、「楽しく」という言葉を加えてみてください。「いまを楽しく生きる」と思ったら、「何をしたら、自分は楽しくなれるのだろうか」と発想が切り替わります。

「やりたいことが見つからない」という悩みの多くは、マイナス思考から生まれるものではないでしょうか。それを「いまを楽しく生きる」と考えるように切り替えたら、プラス思考に変わります。

そのプラス思考の延長線上に、本当にやりたいことが見つかるはずです。

【次回へ続く】