拡大・深化を続ける
ペットビジネス
――ペットブームのイメージから、ペットの飼育数は右肩上がりという印象でしたが、2021年の調査(一般社団法人ペットフード協会「2021年〈令和3年〉全国犬猫飼育実態調査」)によると犬は減少、猫は横ばいなのが実態なんですね。
生田目 飼い犬や飼い猫の正確な数を把握することは難しいので、あくまでも参考値と考えたほうがいいでしょう。理由としては、まず飼い主となる人間の人口そのものが減少していること。また急速な高齢化で、健康や経済的な不安からペットの飼育をあきらめる人が多いということもあります。
実は、業界では、高齢化に伴い、ペットを飼う高齢者が増えると予想していたんですが、実際には「ペットの一生に責任を持てない」「負担が大きい」と二の足を踏む人が多かったようです。
――2000年から続くペットブームに加えて、2020年からのコロナ禍によるペットの巣ごもり需要は、かなり話題になりました。ペットショップでは、需要の高まりで子犬や子猫の値段も高騰したという話も聞いています。
生田目 確かにコロナ禍前の2019年と比べて2020年、2021年では、新たに飼育された犬や猫はいずれも増加したと言われています。
家にいる時間が増えたというだけでなく、リモートワークによるストレスや孤独感、先の見えない社会への不安など、多くの人がメンタルの不安定さを感じたと思います。そんな不安な気持ちをペットで癒やされたいと考えた人も少なくありませんでした。
一方、飼育頭数の増減に関わらず、ペットビジネスのマーケットは年々規模を拡大し、今では1.5兆円とも1.6兆円ともいわれています。
これが意味することは、「大切な家族であるペットには、さまざまな形でお金をかける」という人が多数派になってきたということです。
このようにペットをめぐる環境は大きく変化しながら、マーケットを成長させてきました。そして、ここ数年のコロナ禍や世の中のDX化の動きは、ペットビジネスにも大きな変革をもたらしています。
――そもそも「ペットビジネス」の定義は、具体的にどのようなカテゴリーがあるのでしょう。
生田目 ペットビジネスは、(1)生体販売、(2)ペットフード、(3)動物医療、(4)ペット用品、(5)ペット生活関連サービス、(6)その他の6つに分類できます。市場規模としては、ペットフード、動物医療、ペット用品で全体の3/4を占めています。
「生体販売」は、文字通り子犬や子猫の販売です。犬や猫を展示販売するペットショップだけでなく、繁殖者であるブリーダーもこのカテゴリーに含まれます。
以前はペットショップといえば専門店がほとんどでしたが、今は大規模量販店にテナントとして入っていたり、大型ペットショップがチェーン展開するなど、ペットを購入しやすくなっています。
生体販売に関しては、展示販売の是非や売れ残ったペットの殺処分といった問題が長年議論されています。その解決策のひとつとして、2021年6月には「改正動物愛護管理法」が施行。出生後56日を経過しない子犬や子猫をペットとして販売することが、原則禁止となりました。
また、従業員1人あたりの飼育数の規定やケージの大きさの基準も設定。2022年6月からは、販売業者に犬や猫へのマイクロチップ装着を義務づけるなど、ペット販売の環境を改善することで、劣悪な環境で無理な繁殖や販売をする悪徳業者の排除を目的としています。
「ペットフード」においては、高級志向の高まりが最近のトレンドです。欧米では日本よりペットフードの安全基準が厳しいため、安心安全・健康志向の飼い主から海外産ペットフードは高い人気を誇ります。
ペットフードのトレンドとしては、ライフステージや健康状態に合わせた種類の多様化も特徴です。高齢用や肥満用、歯石や毛玉対策など、ニーズに合わせたさまざまな種類のペットフードが充実。スーパーやコンビニで手軽に購入できるようになっています。