メーカー(製造業)の仕事は、自動車、電機、食品……などの商品・サービスをつくって売ることですが、お客さまに満足いただけるものを過不足なくつくって遅滞なく届けるために、メーカーにはさまざまな機能があります。たとえば商品を正しく届けるための物流を評価する指標にはどのようなものがあるのか。メーカーを目指す人なら知っておきたい基本について、書籍『全図解メーカーの仕事 需要予測・商品開発・在庫管理・生産管理・ロジスティクスのしくみ』から紹介していきます。
具体的に物流の状態を把握し、検討するための指標を説明します。物流品質の指標には、誤出荷率(誤出荷発生件数÷出荷指示件数)、汚破損率(汚破損発生件数÷出荷指示件数)、クレーム発生率(クレーム発生件数÷出荷指示件数)などがあります。間違いなく、壊さず汚さずに商品を届けられたかを測るものです。それら商品自体に関するものだけでなく、トラックドライバーの配達時の対応も含めて、物流品質として管理されます(図16-6)。
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商品を正しく届けるという意味では、納期も重要です。この指標には、納期遵守率(納期内納品件数÷受注件数)があります。消費者向け配達では、より早く届けることが競争力になりますが、納期を守るのは大変になります。ここで競争しようとすると、コストは上がる傾向があり、品質も一部は犠牲にしなければならないかもしれません。
物流の費用に関する指標には、売上高物流費比率があります。例えばアパレルと食品では、温度管理が異なるため、費用が大きく異なります。一方で、1000円の商品でも10万円のブランド品でも、工程が同じならかかる費用は同じです。そのため単価の安い商品は、より慎重に物流費用を考える必要があります。商品は売れていても、配送費が高騰して収益化できずに事業を休止した事例もあるくらいです。
これら物流品質、納期、コストはトレードオフの関係にあります。そのためメーカーや小売業はこのバランスを注視しつつ、どこで競争優位を獲得するかを考える必要があります。
日用品メーカーの花王は欠品することなく顧客の注文に応えるため、全国約8万店の顧客に、受注から24時間以内に納品できる物流体制を構築しています(95)。このためのコストは高くなりますが、納期で差別化を図り競争優位を獲得しようとしていると考えられます。
積載効率
輸送機能に関する指標を説明します。国内の輸送活動の90%以上がトラックです。トラックを有効活用する指標として「実車率」「積載効率」「実働率」があります。
●実車率(実車走行距離÷全走行距離):例えば、東京から大阪までの荷物を運び、復路に何も積まずに戻ってきた場合は、実際に荷物を運んだ割合は半分となる。荷物を乗せて運ぶことを「実車」といい、この場合は半分なので実車率は50%となる。大阪から東京への復路で他社の荷物を乗せて運ぶことができれば実車率は100%となる。
●積載効率(輸送トン数÷最大積載可能トン数):トラックの荷台にどれくらいの荷物を積んで運んでいるかを表す指標。2トントラックに1.2トンの荷物を運んでいた場合の積載効率は60%になる。当然、トラックの荷台をいっぱいにして運んだほうが効率的だが、取引先の希望時間に間に合わせたり、急な納品に対応したりすると、トラックの荷台がいっぱいになるのを待てない。
●実働率(トラックの走行時間÷1日当たりのトラックの総稼働時間):は所持しているトラックの稼働率です。取引先へ商品を届ける際、倉庫での荷下ろしに時間がかかり、倉庫の手前で順番待ちの渋滞が発生することがある。この待機時間が、トラックの有効活用の点で問題になっている。実働率はトラックの稼働時間分析に使われる。