ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から一部を抜粋しながら、毎日1カ国ずつ世界の国を紹介する。
イギリスってどんな国?
イギリスは、ヨーロッパ大陸の北西にあるグレートブリテン島とアイルランド島北部などで構成される島国で、ヨーロッパ大陸とは、ドーバー海峡に掘られた全長49.2kmのユーロ・トンネルで結ばれています。
正式国名は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」で、国旗ユニオンジャックは、イングランド、スコットランド、ウェールズ(現在の国旗には含まれない)、アイルランドの4カ国の国旗を組み合わせて作られています。
1066年にノルマン人が侵入征服しノルマン王朝を樹立しました。15世紀の大航海時代になると、計画的に植民地経営をすすめ、アジア、アフリカだけでなく北アメリカへも進出しました。
18~19世紀の産業革命を経て、ヴィクトリア朝時代(1837~1901年)に大英帝国は絶頂期になりました。この時期には世界の陸地の4分の1を植民地とし、支配する地域のどこかは陽光の下にあることから「太陽の沈まない国」と呼ばれました。
第二次世界大戦後、植民地が相次ぎ独立し、かつての海外領土の大部分は独立国となりました。現在はイギリス連邦(英連邦)というゆるやかな連合体を形成しています。
成文憲法はありませんが、伝統や慣習がその代わりとして規範となり、君主(現在は女王エリザベス2世)は〈君臨すれども統治せず〉といわれる象徴的存在です。
1949年にNATO、1973年にEC(現EU)に加盟しましたが、2020年にEUから離脱しました。
国民投票を経てEU離脱
EU離脱は2016年の国民投票(開票結果は離脱が過半数)で決まりました。大きな要因の一つに、他国からの移民の急増が挙げられます。
EU域内で人は自由に移動できるため、2000年代に、イギリスには東欧などのEU加盟国から多くの移民が流入しました。
しかし、2008年のリーマンショック以降、イギリスの失業者を中心に「移民に職を奪われている」という不満が高まります。
その結果、EUのルールではなく、自分たちのルールで自国をコントロールしたいと考える国民が増え、EU離脱につながりました。
伝統や文化を大切にする人々
伝統を大切にする人々が多く、さまざまなスポーツの発祥の地です。サッカーとラグビーはもともとフットボールという一つの競技で、イギリスの学校などで古くから盛んに行われていましたが、学校ごとに異なっていたルールを統一する過程で、手を使ってよいとするものと、手を使わないものとに分かれてできたものです。
このほか、野球の原形といわれるクリケット、ゴルフや競馬もイギリスが起源とされています。16世紀頃に貴族が自分の馬に賭けてレースを行ったものが、やがてオークスやダービーなどの現在の競技に発展しました。
産業革命の発祥地であることから、伝統的な工業国で、自動車・航空機・電気機器のほかエレクトロニクス分野や高度先端技術が発展しています。また金融・サービス業が成長しており、シティ・オブ・ロンドンはニューヨークのウォール街と並ぶ世界の金融市場の中心地です。
今なお続く北アイルランド問題
1922年にアイルランド自由国が成立した際、プロテスタント系住民の多かった北アイルランドの6州は、イギリスにとどまる道を選びました。
しかしこれに反対した少数派のカトリック系住民はアイルランドへの統合を求めて独立運動を起こし、1960年代後半以降、武力を用いた紛争に発展しました。
イギリスの統治を望むプロテスタント系勢力と、アイルランドへの統合を求めるカトリック系勢力の対立は解決していません。
イギリス
面積:24.2万㎢ 首都:ロンドン
人口:6708.1万 通貨:スターリング・ポンド
言語:英語(公用語)
宗教:キリスト教59.5%
隣接:アイルランド
(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIAのThe World Factbook(2022年2月時点)を参照
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)