なぜローマは領土を拡げ、一方ギリシャは都市を建設したのか?

 たとえば、ヨーロッパの歴史遺産が好きで、ローマやギリシャを訪れる人も多いと思います。古代ローマではさまざまな技術が発達していたのは有名で、どんどん山を切り崩し、最短距離の道をたくさん作りました。

 そうやって大きな道、便利な道を作ることができたので、そこが軍用道路となり、巨大な軍事力を持つこともできましたし、巨大な帝国を築いていくことにつながるんです。

 一方、ギリシャはどちらかと言うと、ローマ帝国ほど軍事力を持たなかったですし、巨大な帝国を築くこともありませんでした。

 もちろん、そこにはいろんな理由が絡んできますが、ひとつは思想というか、考え方そのものの違いがあるんです。

──どういうことですか?

井田:もともとギリシャには、山には神様が住んでいて、神聖な山を切り崩して軍用道路を作るなんて発想がなかったんです。そこは少し日本の思想と似ていますよね。だからこそ自然を切り崩すことなく、山を大回りして道を作ることが多かったわけです。

 その結果、ギリシャでは多くの都市国家が点在するようになったんです。思想的な背景が道の作り方に影響して、都市や国のあり方にまで影響を及ぼしているおもしろい例ですね。

 そういう背景を知っていると、旅行へ行くときも見る目が変わってくるのではないでしょうか。

 地理というと、山脈の名前やその土地の特産物を覚える、ただの暗記科目と思われがちですが、私が鉄道から入ったように、自分の興味のある分野から掘り下げていくと、全然違った楽しさに出会えると思います。

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