意外と知らないリオのカーニバルの起源

──『読むだけで世界地図が頭に入る本』は、世界のほとんどの地域を網羅するように書かれているのですが、井田先生が特におもしろいと感じている部分はどこかありますか。

井田:たとえば、リオのカーニバルが生まれた背景なんておもしろいですよね。ブラジル・リオのカーニバルは南米を代表するお祭りの一つですが、もともとの起源はヨーロッパにあります。

 元来はキリスト教、カトリック教会によるお祭りで、肉食を禁じた復活祭に先立って行われたもの。つまり「これから肉を食べられない日が続くから、その前祝いね」という感じで始まったお祭りなんです。

──そうだったんですね。まったく知りませんでした。

井田:普通はそんなことまで知りませんよね。でも、それだけではあそこまで盛大な祭りにはならないのですが、ちょうど、そこに奴隷たちの話が絡んでくるんです。

 当時、アフリカから来た奴隷たちが騒げる機会はほとんどなかったんですけど、そうした人たちにもガス抜きは必要です。ガス抜きをしないと、どこかで爆発してしまいますからね。

 そこで、奴隷たちが思いっきり騒げる機会としてリオのカーニバルが利用されたというわけです。

 現在、リオのカーニバルと言えばサンバが欠かせませんが、サンバはアフリカの民族音楽の流れを汲んでいます。リオのサンバは奴隷たちが踊り、騒いでいたのがもともとの始まりで、20世紀の前半から踊りと扮装のコンクールが行われるようになり、今のような大きなお祭りへと成長していったんです。

 つまりリオのカーニバルは、もともとあった文化に違う文化が混ざり合って、まったく新しい文化となっていった象徴のようなお祭りなんです。

 旅行や観光でリオのカーニバルを見に行く人は多いでしょう。ただ現地のお祭りを満喫するだけでなく、そうした地理や歴史の背景を知っていると、また違った楽しみ方ができると思います。

──たしかに、それはおもしろいですね。旅行が好きな人は、そういった興味から地理を学んでいくのもいいきっかけになりますね。

井田:本当にそうなんですよ。地理はどんなところからでも入っていけます。