中国でも「伝え方」「片づけ」への興味が高まっている

【こんまり×佐々木圭一】なぜ海外で「日本のメソッド」が爆発的に支持されたのか?中国のシリコンバレー・中間村で行われた佐々木圭一氏の講演会(2017年)

佐々木 日本でもびっくりしたのに、中国でも100万部というのは、それ以上にびっくりでした。こんなことが人生でまた起きるのか、と。

 しかも、『伝え方が9割』は日本語で書いているだけではなくて、中身も日本の生活での文例がとても多いんです。例えば、日本のアイドルがこんなふうに言っています、なんて文例があるわけですよね。「私のことは嫌いでもAKBのことは嫌いにならないでください」(前田敦子さん)は、「私」と「AKB」、反対のコトバが入っているから強いコトバになっている、などと解説しているわけです。

 ところが、それが中国語に訳されていて。なのに売れていく、というのは、とても驚きました。

こんまり 海外で売れるって、なんだか突拍子もないですよね。何がウケているのか、最初はわからないじゃないですか。現地の方の声がわからない状態で数字だけが積み上がっていく。なんか、びっくりというか、目をぱちくりする感じとか。なんでだろう、という感覚はとてもよくわかります。

佐々木 日本だと、それこそ僕もテレビ出演させていただいたり、書店を回ってPOPをお渡ししたり、頑張った結果という手応えがあるのに対して、海外だとそれもない。

 こんまりさんは海外でもテレビに出られていますけど、僕は中国では出ていないですし、何もしていないのに勝手に100万部に行っているので、何だそれ、という。

こんまり すごいですね。本に、本当に力があるんでしょうね。

佐々木 それで現地の出版社の方に教えてもらったのが、伝え方の本はたくさんあっても、使える文例がこんなにある本は他にない、ということだったんです。すぐに使える、と。

こんまり たしかに、すぐに役立つ、というのはありますね。

【こんまり×佐々木圭一】なぜ海外で「日本のメソッド」が爆発的に支持されたのか?

佐々木 中国での『伝え方が9割』は、沿岸部の都市部で比較的、若い人たちが読んでいるんです。若い層に、自分でお金を払って技術を手に入れる、という習慣ができてきたと伺いました。

こんまり そうなんですね。

佐々木 日本人からすると、中国の人のイメージは、自分の意志をズバッと言う、という感じだと思います。ですが、会社で仕事をしていると、人間関係の問題が必ず出てきます。同僚との関係もそうだし、上司との関係もそう。そうなると、コミュニケーションの悩みは出てきますよね。もっと自分の話す意図をうけとって欲しいという気持から、読まれていると伺いました。「相手をイヤな気分にさせないで、こちらの意図を伝えられる」ことが魅力だと伺いました。

こんまり 中国は変わってきていますよね。私も仕事で何度か行かせてもらっていますが、若い人が片づけに興味を持ち始めているんです。中でも、私の本に興味を持ってくださっている方は、やはり精神的なところに注目している。心を整えるという側面での片づけです。自己啓発的なところが好きで、私の本を読んでくださっている中国の若い方も多いと聞きました。

 若い女性が集まるサミットで講演させていただいたときは、自己啓発的な考え方もそうだし、働き方、さらには見せ方や伝え方まで、トータルに学んで自分を磨いていくというところに中国の人たちの意識が向かっているのでは、と感じました。

【こんまり×佐々木圭一】なぜ海外で「日本のメソッド」が爆発的に支持されたのか?

佐々木 中国の出版エージェントの方から聞いたのが、「中国は日本ほど部屋が狭くないし、たくさん購入することに価値を感じています。食べ物でも、来客には残されるくらいを出さないと、という文化がもともとあります。とはいえ、洗練された文化が世界から入ってきて、若者の先進世代は、ほんとうに大切な一つのものを大事にしよう、大切なものだけを残そうという考え方が新しく育ち始めていると感じている」ということでした。

 中国の出版社の人も、すっきりと部屋を片づけられる女性には憧れる、という話をされていました。中国で、若い人たちの気持ちが変わり始める寸前のような感じがしますね。ここで、たくさん手に入れることも幸せの一つだけど、本当の幸せってなんだろうと、こんまりさんが発信していくことに、大きなポテンシャルをぼくは感じています。

こんまり じゃあ、佐々木さんの本の隣に中国でも置いていただいて(笑)。

佐々木 もうぜひぜひ、喜んで。なんなら、一緒に中国でプロモーションもやりましょう。

*次回、対談第3回(最終回)は「日本人は自分たちの価値に気づいていない」の予定です。

【こんまり×佐々木圭一】なぜ海外で「日本のメソッド」が爆発的に支持されたのか?佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト:www.ugokasu.co.jp
Twitter:@keiichisasaki