「葛藤のシーズンは8ヵ月」秘話
寺田 「がんばる状態」というとツラそうですよね。この表現でいいのだろうかと話していたときに、横山さんから「ただ、ここは高速道路にもう入る直前だからいい。おもいきってアクセル踏む!」という最終決断がありました。また、「がんばる状態」の「葛藤のシーズンは8ヵ月」もまたチャーミングだなと思ったんですが、どういう経緯で出てきた言葉なんですか。
横山 最初は、「葛藤の期間」とか「葛藤の時間」と言っていたんですね。ところが「期間」とか「時間」と表現してしまうと、2~3週間で葛藤が終わるのかなと誤解されてしまうことがあったのです。そんな甘いものではないですし、期待されてもいけませんのでやめました。そこで中期的なコピーを探していたら、「シーズン」ってどうだろうなと。少なくとも「ワンシーズン」と考えれば3~4ヵ月はかかるというイメージがわくと思います。
寺田 ただ、最終的には3~4ヵ月でも微妙な半年でも1年でもなくて、「8」という数字が出てきた。これが出たとき、ビビッときたんです。理由はわからないんですけど、「8ヵ月っていいな」と。
横山 私自身、割り切れない数字ってすごく好きなんですよ。「葛藤のシーズンは8ヵ月」と言われると、ちょっと「脳に空白」ができる、と思ったんです。それが9だと、ああ半年以上1年未満かなと想像されてしまいます。9ヵ月ということは、スリーシーズンの意味ですから。それが8だと、なんで8なの?となります。ただこれはあとづけであって、数々の現場での格闘から「葛藤のシーズンは8ヵ月」と言えるんです。興味深いことに、『部下本』で紹介した「予材管理」の理論では「なぜ目標の2倍なんですか?」とよく突っ込まれるのですが、『マインド本』の「葛藤のシーズン」の8ヵ月はあまり突っ込まれません。「8ヵ月で習慣化するのか。なるほど。そうかもしれない……」と、妙に納得してしまうのでしょうか(笑)。
品川の喫茶店でスパークした「あたりまえ化」
寺田 あと、『マインド本』で出た「思考ノイズ」というコピーがチャーミングだなと思いました。『マインド本』をパラパラめくっていると思い出すのは、この本の背骨である、「あたりまえ化」というキーワードにいきつくまで、相当な時間を費やしました。品川の喫茶店で打合せをしていたとき、「あたりまえ化」がというフレーズが出てきて、「コレだ!!」と一斉に声があがりましたね。「この本って、「『あたりまえ化』の本だよね」と。
横山 ええ、そうでした。
寺田 あの「あたりまえ化」のスイッチは、いま思うと相当インパクトが大きかったです。「あの発見」があったからこそ、一気に原稿を削ることに舵をきることができた。あそこの決断で一気に60ページくらい削りました。何もかも詰め込もうとしていた状況から、いらないものは何もかも捨てよう、と割り切れた瞬間、でもあります。
横山 そうかもしれないですね。
寺田 「あたりまえ化」へのベクトルが引かれたからこそ、「学習の4段階」の4ステップにも迷うことなくいけました。あの瞬間って、横山さんにとってはどんな感じでしたか?
横山 ああ、その表現があったか!という感じです。
寺田 思いもしなかった?「あたりまえ化」という表現。
横山 「あたりまえ」という表現は普通に誰もが使う。そこに「化」をくっつけることによって、なんか特別な意味が漂う。「化」をつけると、ああ、なるほど!と思いました。
寺田 横山さんの中でもスイッチが入った感じだったんですね。
横山 ええ。「あたりまえにする」=「あたりまえ化」か。なるほど!と。
寺田 思考を「あたりまえ化」すると、『マインド本』の中では連発しています。それまで「あたりまえ化」というキーワードは、セミナーでも1回も使ったことがなかったのですか?
横山 ないですね。