そうなると今度は、いつから変えるとよいかをシミュレーションしてもらいます。コーチングには、「タイムライン」という考え方があります。たとえばオリンピックを目指すような選手だと、大きな大会が毎年のようにあります。何年にオリンピックがあり、その2年前に世界選手権があって……。実際に大会に参加しているシーンをイメージしてもらって、銃を替えるタイミングを考えてもらうと、「世界選手権の後に変更するとよさそうですね」という明確な答えが出てきました。
選手の「自分会議」に
ほんの少し刺激を与える
意外に思われる方もいるかもしれませんが、私は射撃代表選手に対して、何か特別に高度な知識を用いてコーチングをしたわけではありません。そもそも専門的な知識も持ち合わせていません。具体的なアドバイスも出せませんし、出す必要も感じていません。日々、選手らが取り組んでいる自分会議に、ほんの少しの刺激を加えることが大切なんです。一緒に想像して、考えてみる。それが、スポーツメンタルコーチングの基本姿勢となっています。
というのも、選手自身は自分の中に「うっすらとした答え」を持っているんですよね。潜在的に持ち合わせている答えやアイデアを顕在化させるために、選手1人では行わないような問いかけをはじめとする刺激を、色々な角度から提供する。すると選手が自ら、点と点を結ぶ何かに気づいたりするのです。
あくまでも主語は選手。主体性をもって課題に向き合う姿勢が構築できれば、自然と結果がついてくるので不思議ですよね。
*柘植陽一郎・一般社団法人フィールド・フロー代表に聞く(2)に続きます。