なお、高齢だからといって、つみたてNISAが想定するような株式100%のインデックスファンドへの投資が不向きだと考える必要はない。筆者としては、むしろ最晩年まで投資資金を有効活用すること、子ども世代と協力して「2世代運用」で次の世代の資産形成も併せて考えることなどを強くお勧めしたい。

 iDeCoの年齢延長も検討されることになりそうで、それ自体はいいことだ。ただ、iDeCoの場合は一定の年齢・年数を経過しないと現金化できないなど、流動性に難が生じる場合がある。

 流動性の点では、いつでも部分解約して換金できるつみたてNISAの方が安心であり、制度もシンプルだ。

つみたてNISA倍増が優れている理由
(3)商品選別効果は大きい

 つみたてNISAは、対象となる投資商品を金融庁が絞り込んでいる点に大きな特色がある。あくまでも筆者の推測だが、金融庁は、14年に導入されたNISAでの金融機関の営業が、制度の趣旨に沿わない行儀の悪いものだったことに問題を感じたのだろう。毎月分配型や手数料が高い商品の販売、いわゆる回転売買などといった行為が例として挙げられる。

 その点、つみたてNISAの対象商品を絞り込んだのは英断だった。インデックスファンドの普及が進んだこと、加えて手数料の引き下げ競争が起こったことなど、投資家にとって好ましい効果があった。

 国民が長期的な資産形成に成功し、資産からの所得を増やすためには、(1)手数料が安い商品に投資すること、(2)頻繁に売り買いしないこと、(3)シンプルな商品を選ぶこと、などが大切だ。これらを伝えて、かつ投資を体験してもらうために、つみたてNISAは絶好の投資教育教材だ。

「資産所得倍増」の具体策として、利用上限額が「倍増」されたつみたてNISAが強調されれば、国民に好ましい資産運用法を伝える広報・教育効果がある。

 つみたてNISAの対象商品や運用ルールについては、一部緩和ないし変更してもいいのではないかと思われる点がある。しかし、対象商品を限定する現在の運営は堅持すべきだろう。「抜本的改革」という言葉を利用して、売り手側が不当にもうかるクズ商品にまで対象を広げようとする動きが出ることに対しては、大いに警戒したい。

 また、仮につみたてNISAの倍増が検討される場合、これをビジネス上の好機と捉える金融機関・運用会社と、顧客の投資資金がもうかりにくい商品に流れることを嫌って「やんわりと反対」する会社とに態度が分かれるかもしれない。金融機関・運用会社のビジネスに対する態度が表れるかもしれないので、今後の検討プロセスに注目したい。