習近平とプーチンが
会談で語ったこと

 二人が発した言葉の中には、ウクライナ情勢や台湾有事の有無といった今後の国際情勢を読み解く材料がちりばめられている。いくつか挙げてみよう。

<習近平総書記の発言要旨>
・「中国はロシアとともに、主権や安全保障などの核心的な利益と主要な懸念に関する問題について互いに支援し続け、両国間の戦略的協力を密接化する」
・「中国は、ウクライナ問題の歴史的経緯を踏まえ、独立した判断を下してきた」
・「全ての関係者は、責任ある方法でウクライナ危機の適切な解決を推進しなければならない。中国はそのため、引き続きそのあるべき役割を果たしていきたい」

<プーチン大統領の発言要旨>
・「習近平主席の強力なリーダーシップの下、中国は目覚ましい発展を遂げ、ロシア側は心からのお祝いを表明する」
・「ロシアは、中国が提案した世界の安全保障イニシアチブを支持し、いかなる勢力が、いわゆる新疆、香港、台湾などの問題を口実に、中国の内政に干渉してこようとも、それに反対する」

 これらの発言からまず見えてくるのは、中国とロシアの関係が、アメリカなどに対抗する意味でますます強固になっているという点だ。専制主義国家のリーダー同士、手を携えていこうという思いがにじみ出ている。しかし、ポイントはそこではない。

両首脳の発言で
注目すべき2つのポイント

 注目すべきは、習近平総書記がウクライナ情勢を巡り「あるべき役割を果たしたい」と語った部分だ。

 これは、国際社会の中で、長期化する戦争に対して、「いつになったら終わるのか」「エネルギーや小麦はどうなってしまうのか」という深刻な懸念が充満してきたのを機に、近く、習近平総書記が、独自の判断で仲介に乗り出すのではないかという予感を抱かせるものだ。

 事実、6月15日、ロシアのタス通信(電子版)は、「習近平総書記がプーチン大統領にウクライナ危機の解決を支援する用意があると語る」と報じている。

 前述した発言を見れば、プーチン大統領のほうが低姿勢だ。また、この会談には加わっていないウクライナのゼレンスキー大統領も、アメリカなどからの武器支援の配給の遅れにいら立ち、戦争そのものに関しても、早期に収束させたい思いが強い。

 だとすれば、両者からの要望を受け、習近平総書記がようやく重い腰を上げる日も遠くないのではないかと思うのである。

 もう一つ注目すべきは、プーチン大統領が、これまで習近平総書記が掲げてきた「核心的利益」と位置づけるもの全てを容認し、台湾統一の動きまでも支持したことだ。

 今年秋の中国共産党大会で3選を目指す習近平総書記には、心強く感じられたのではないだろうか。

 習近平総書記とプーチン大統領がここまで踏み込んだ発言を行った背景には、両者の権力基盤が揺らいでいることがあるようだ。