現代は、「課長」受難の時代だ。メンバーの価値観の多様化、働き方改革への対応などに加え、リモートワークへの対応という難問まで加わった。しかし、これを乗り越えれば、新たな「課長像」=「課長2.0」へと進化できる。そう主張する『課長2.0』がロングセラーとなっている。著者は、『社内プレゼンの資料作成術』などのベストセラーで知られる前田鎌利氏。管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなもの。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんなマネジメント手法について、ソフトバンク時代に管理職として目覚ましい成果を上げた経験を踏まえて書かれた内容に、SNSなどで「管理職として勇気づけられた」「すぐに実践できるヒントが詰まっている」と共感の声が寄せられている。本稿では、本書では言及できなかった「社内の“花形”部署の管理職から外されたときの戦略」について解説する。(構成/前田浩弥)

「花形」部署から外されたときにどうするか?Photo: Adobe Stock

「花形」部署を外されて、落ち込むのはもったいない

 社内には、みんな表立って口にしないまでも、「花形」と見られている部署と、「縁の下の力持ち」と見られている部署の2つがあります。

 どういう部署が「花形」かは、会社ごとによって千差万別ですが、おおむね直接的に「売上/利益」を出す部署が「花形」と見られているのではないでしょうか? そして、「縁の下の力持ち」の部署では、メンバーもモチベーションを落としやすく、チームの雰囲気が停滞しがちなのが現実ではないかと思います。

 では、そのような部署に管理職として着任したら、どうすべきでしょうか?

 なかには、そのことをネガティブに捉えて、モチベーションを下げる管理職もいますが、それは非常にもったいないことだと思います。私は、むしろ、それをチャンスと捉えて前向きなアクションを取ることで、自分のキャリアがひらけると考えています。

「言葉」よりも「数字」で示す

 私自身、会社員時代に、何度も「縁の下の力持ち」部署の管理職を経験しました。

 ここでは、ソフトバンク時代の経験をお伝えします。ソフトバンクで「花形」といえば、「企画」「営業」などの部門。そのとき私が管理職として配属された「携帯電話の解約処理」を担当する部署は、明らかに「縁の下の力持ち」でした。

 しかし、私はそれをネガティブには捉えませんでした。

 なぜなら、「解約処理」そのものは利益貢献するわけではありませんが、ユーザーに対して絶対に欠かせない重要な業務だからです。しかも、私にはあるアイデアがありました。「なぜ、お客様は解約するのか?」をビッグデータ分析することで、解約率そのものを下げる提案をすれば、会社に大きな利益貢献ができる可能性があると考えていたのです。

 だから、着任して早々、私はメンバーに自分の考えを伝え、士気向上を働きかけました。

 もちろん、反応は鈍い。多くのメンバーは「どうせ自分たちは……」という認識でしたし、「花形」部署から異動してきたメンバーのなかには「なぜ、私が……」という態度を示す人もいました。そんななか、私の言葉ひとつで、士気が上がるほど甘くはありません。

 重要なのは、「言葉」ではなく「数字」です。

「解約理由」をデータ分析して、「解約率を下げる提案」をする。関係部署に粘り強く働きかけて、それを実行してもらうことで、「解約率」が下がり始めたら、それがどのくらいの「利益貢献」をしているのかを算出。わかりやすいプレゼン資料にまとめて、上層部に「数字」で訴えかけていきました。

 こうして、会社への貢献を「数字」で示すことができれば、私たちの部署に対する社内評価は激変します。そして、社内の評価が変われば、メンバーたちのモチベーションも劇的に向上します。こうして好循環が始まり、チームは見違えるように活性化していくのです。

「花形」部署を外れるのは、むしろチャンスである

 このように、私は「縁の下の力持ち」の部署の管理職に着任したら、必ず、その部署のリソースで「数字」で示せる貢献ができる仕事を見つけ出すようにしていました。そして、その「数字」を実現するために、メンバーと一緒に知恵を絞り、汗をかく。それが成功したとき、オセロの角を取って黒が白へと一気に変わるように、その部署に対する社内評価は一変するのです。

 そして、そのプロジェクトを率いた管理職は、「花形」部署で成果を出したときよりも、高い評価を与えられることが多いと言えます。すなわち、より重要な職責を任されることで、キャリアが大きくひらかれていくのです。

 だから、「花形」部署から外されるのは決してネガティブなことではありあせん。むしろ、チャンスと捉えるべきなのです。

(本稿は、『課長2.0』より一部を抜粋・編集したものです)