ゼロベースで白紙に絵を描く力がイノベーションを生む
アーキテクト思考の本質は、ゼロベースで白紙に絵を描くことです。
詳しくは拙著『アーキテクト思考』で解説していますが、その一番のポイントはゼロベースで構想することです。
下図は、アーキテクト思考で必要な全体構想の5つのステップです。現状を把握した後に「更地」をつくることが全ての出発点となりますが、我々は過去の経験や周囲の情報にもとづいて思考しているため、どうしてもゼロベースから物事を考えることは容易ではありません。
「更地」とは一つの比喩ですが、業界や会社の常識を捨て去った状態のことを指します。私たちは考える際に、自社の前例や競合の動向をもとに判断することが多いですが、それらはアーキテクト思考を阻害する要因になります。
読者の皆さんの会社でも、次のような会話が交わされているのではないでしょうか。
●Aさんは給与が不満で退職したと聞いた。退職の意向を伝えてきたBさんを説得する際には昇給を提案してみよう
●競合のA社はクラウド型の営業管理システムを導入したら売上が伸びたらしい。すぐに我が社でも導入を検討しよう
●過去5年間の売上高の年平均成長率は5%だったので、来期も5%成長を目指そう
これらが全て間違っているという訳ではありませんが、ここで強調したいのは、ゼロベースで将来を構想しないと、VUCAの時代に取り残されてしまうということです。
これまで多くのものがスマホの登場によって使われなくなりましたが、より一層のデジタル化とグローバル化の進展により、今後も多くのものがなくなっていくでしょう。
ゼロベースで発想する構想力を持ち、自らの力でスピーディに成果を出す術を身につけ、VUCAの時代を生き抜きましょう。
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。
2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。
現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
IGPIグループを日本発のグローバルファームにすることが人生の目標。
細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。
『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。