営業、説明会、発表会……。社外プレゼンはビジネスパーソン必須のスキル。ところが、プレゼン資料の作成に多くの手間と時間をかけているにもかかわらず、思うような反応が得られずに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そこで役立つのが、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。本書では、「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「社外プレゼン資料」を作成するうえで、多くのビジネスパーソンが陥っている根本的な「誤解」について解説します。
なぜ、「伝わらないプレゼン」をしてしまうのか?
プレゼンテーション(Presentation)とは何か?
英和辞書を見ればわかるとおり、「発表、提示」という意味をもつ言葉です。「何を当たり前のことを……」と思われるかもしれませんが、実は、ここに注意すべき“落とし穴”があります。
というのは、社外プレゼン(営業プレゼン)を「自社の商品やサービスを発表、提示すること」と考えるがために、効果的なプレゼンができなくなってしまうことが多いからです。
たとえば、企業システムの構築に実績のあるIT企業の営業マンが、新規開拓の営業先で、自社の技術の優位性について滔々とプレゼンしたらどうなるでしょうか?
プレゼンを受ける側にすれば、「なぜ、この会社の自慢話を聞かなければならないのか?」と早々に興味を失うでしょう。もしも、その人がIT技術について専門的な知識をもたない場合には、そもそも、その営業マンが何を伝えようとしているのかすら理解できないはずです。
それでは、プレゼンの内容がいかに「自社のサービスを正確に提示する」ものであったとしても、営業プレゼンとしては全く機能しないでしょう。仕方なく最後まで聞いてくださったとしても、次回のアポイントをいただける可能性は限りなくゼロに近いに違いありません。社外プレゼンとしては「失敗」というほかない結果を招くわけです。
もちろん、社外プレゼンを「自社の商品やサービスを発表、提示すること」という意味で理解するのが“語意”として間違っているわけではありません。しかし、そのような認識でいると、営業先には何ひとつ響かないプレゼンをするという“落とし穴”にはまってしまうおそれが大きいのです。
社外プレゼンは、徹底的に「相手」に合わせる
では、どう考えればいいのでしょうか?
この問題について考えるためには、「社外プレゼンとは何か?」を理解しておく必要があります。下図をご覧ください。
ここに示しているように、社外プレゼンの多くは、次の5つのプロセスをたどります。
(1)相手の「課題」などを把握する
(2)自社の商品・サービスで、「課題」を解決する方法を考える
(3)プレゼンをする
(4)相手の「興味」を惹き、「理解・納得」を得る
(5)相手がなんらかの「意思決定」をする
この5つのプロセスの最大のポイントは、「(1)相手の『課題』を把握する」ことにあります。
先ほども説明したとおり、「自社の商品・サービス」を一方的にアピールしても単なる“押し売り”にしかなりません。そのようなプレゼンは、相手にとって「聞く」に値しないものにしかならないのです。
では、どうすれば聞いてもらえるか?
当たり前のことですが、相手の「課題」に対する「解決策」を提案しようとするからこそ、相手は“聞く耳”をもってくれるのです。
たとえば、先ほどのケースであれば、相手企業が「在庫管理」に課題を感じているのであれば、それを自社のIT技術を活用して解決できることを示す(「(2)自社の商品・サービスで、その『課題』を解決する方法を考える」に該当)。そういうプレゼンであれば、相手も興味をもって話を聞いてくれるはずです。
もちろん、相手の課題は多様です。「在庫管理」に課題を感じている企業もあれば、「決済システム」「情報システム」「販売システム」などに課題を感じている企業もあるでしょう。ですから、相手の「課題」に合わせて、適宜プレゼン内容を変更・調整していくことが求められるのです。
徹底的に相手を「知る」ことが不可欠
「課題」だけではありません。
相手が「誰か?」によっても、プレゼンの内容は変わってきます。先ほどのケースで言えば、相手がITに関する知識をもっていなければ、専門性の高い技術的な内容は端折るべきでしょうが、IT知識が豊富な人であれば、そのレベルに合わせて専門的な内容も伝えたほうが効果的かもしれません。
あるいは、相手企業の担当者に対して行うプレゼンと、相手企業の上層部に対して行うプレゼンでも内容は変わってくるはずです。担当者にはより詳細の情報を提供すべきですが、上層部に対しては細部に深入りしすぎるのではなく、提案の本質のみを伝えたほうがいいでしょう。
このように、社外プレゼンでは、徹底的に相手に合わせることが求められるのです。そして、「相手に合わせる」ためには、相手がどのような「課題」をもっているか、相手がどういう特性をもった企業・人物であるかということを、徹底的に「知る」ことが不可欠なのです。
ですから、私は社外プレゼンを「自社の商品・サービスを発表、提示すること」と考えるのではなく、「相手の課題を(自社の商品・サービスを使って)解決する方法を発表、提示すること」と認識すべきだと考えています。この認識を根底にもつことが、社外プレゼンで成功する第一歩なのです。
(本稿は、『完全版 社外プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)