「ゴリゴリの肩」「バキバキの背中」「ガチガチの股関節」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、悩まされるようになった体の不調。「肩がこる」というレベルではなく、痛みさえ生じることだってある。それもこれも「年をとったせいだ」と思いがちだけど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いなのです。
そこで参考にしたいのが、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)、『金スマ』(TBS系)、『体が硬い人のための柔軟講座』(NHK)などで話題のフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏の著書『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、中高年はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも体が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、肩や背中がカチンコチンに硬くなった人が陥りがちな勘違いと柔らかい体をとり戻す方法を解き明かす!
(監修:田畑クリニック院長 田畑尚吾 医師)
硬くなりやすい筋肉
弱くなりやすい筋肉
「理論的かつ結果を出すトレーナー」として数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペア(藤井瑞希選手・垣岩令佳選手)、マラソンの神野大地選手の個人トレーナーほか、数々のオリンピック出場者を指導する。2014年からは青山学院大学駅伝
チームのフィジカル強化も担当。自身が技術責任者を務める東京都・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持を集め活況を呈している。著書は『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)など多数。
筋肉には硬くなりやすい筋肉と、そうでない筋肉があります。硬くなりやすいのは、次のような「姿勢」を支えている筋肉です。
●胸の「大胸筋」
●背中の「僧帽筋上部」
●太もも後ろ側の「ハムストリングス」
●股関節の「腸腰筋」
●ふくらはぎの「下腿三頭筋」
猫背になったり、腰が落ちたりしやすいのは、大胸筋やハムストリングスに硬くなりやすい性質があるためです。専門的には、これらは「体位性活動筋」と呼ばれる筋肉で、多くは2つの関節を動かしている「二関節筋」と呼ばれるものです。
こうした筋肉が硬くなりやすい理由は、その役割にあります。姿勢を安定させるために働くという性質上、筋肉の長さを変えず、関節も動かさない時間が長くなります。それだけに血流が悪くなりやすく、「血行不良 ⇨ 筋肉の硬化 ⇨ 血行不良……」という悪循環に陥りやすいのです。
猫背が直りにくいワケ
こうした体位性活動筋と正反対の(拮抗する)働きをしているのは、「一過性活動筋」と呼ばれる筋肉のグループです。多くは以下のような1つの関節だけを動かしている「一関節筋」で、弛緩しやすく、弱くなりやすいという弱点を抱えています。
◯左右の肩甲骨の間にある「菱形筋」
◯背中の「僧帽筋下部」
◯お腹の「腹筋群」
◯お尻の「大臀筋」
◯すねの「前脛骨筋」
猫背などの不良姿勢は、直そうとしても固定化して改善しにくいものです。猫背が直りにくいのは、胸の大胸筋が硬くなり、これと拮抗して、肩甲骨を寄せて肩を後ろに引く菱形筋が弱くなるというダブルパンチを受けるためです。
柔軟性は高ければ高いほど
いいわけではない
人によっては、普通なら何も運動していないと硬くなる筋肉でも、柔らかいままのケースもあります。もともと柔軟性の高い人は、それ以上柔軟性を上げてはいけません。筋肉は柔らかければ、柔らかいほどいいわけではないからです。
筋肉にはそれぞれに適切な柔軟性があり、関節が動ける範囲である「可動域」も決まっています。筋肉と関節が硬すぎるのは問題ですが、柔らかすぎるのも問題なのです。
筋肉が柔らかすぎると関節が不安定になり、関節を安定させている「靭帯」などの負担が増えてダメージを負う恐れがあります。柔らかすぎる筋肉は、筋トレで強化しましょう。
180度開脚への憧れは捨てなさい
両脚を180度開く「開脚」へのチャレンジが一時期ブームのようになりましたが、両脚は股関節の構造上、前後には約140度、左右には約90度まで開くのが標準です。それ以上は、過度な柔軟性です!
バレリーナや新体操選手のように、競技の特性上180度開脚が求められる人たちは、それに耐えるだけの筋力を身につけて、関節を守るための特殊なトレーニングを重ねています。
一般の方々が理由なく過度な柔軟性を求める必要などありません。先の開脚ブームでは、チャレンジしたものの、ほとんどの人は開脚できず終いだったという噂もありますが、フィジカルトレーナーとしてはそれでよかったと思います(笑)。
※本稿は、『10年後、後悔しない体のつくり方』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、体が若返るメソッドがたくさん掲載されています。