「人前で話すのが苦手」「プレゼンで緊張してしまう」「雑談も苦手」
そんなアナタが参考にしたいのが、TBSの井上貴博アナウンサーの著書『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)だ。アナウンサー歴15年で試行錯誤しながら実践してきた52のことを初公開。「地味で華がない」ことを自認する井上アナが、情報・報道番組の最前線で培ってきた「伝わらない」が「伝わる」に変わるテクニックが満載。人前で話すコツ、会話が盛り上がるテクなど、仕事のプレゼンからプライベートの雑談まで即役立つノウハウ、さらに失敗や葛藤についても赤裸々に語る。
※本稿は、『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
他人の先入観を逆手にとる
「人は見かけによらない」という言い回しがあります。人間の能力や性格は、うわべだけを見ても判断できないという意味であり、見た目で人を判断するのを戒める文脈で使われます。
「見かけで人を判断するな」という戒めがあるということは、それだけ人が先入観で他人を判断しがちであることを示しているとも言えます。
一般的にアナウンサーは、品行方正で優等生というイメージがあるかもしれません。しかも『Nスタ』のような少し硬めの報道番組に出演していることで、私は「真面目な人」「しっかりしている人」という印象を持たれがちです。
「しっかりしている」というイメージへの反抗心
たしかに、私は小さい頃から「しっかりしてるね」と言われながら育ってきたところがあります。それは、9歳年上の兄を意識していたからだと思います。
自分では「できて当然のこと」をしているつもりなのに、周囲から「しっかりしているね」と褒められるのは、かえって不本意でした。褒められているというより、むしろ子ども扱いされているように感じていたからです。
いまでも「真面目」とか「しっかりしている」と言われることにアレルギーともいえるほど、過剰に反応してしまいます。褒められて嬉しい・ありがたいという気持ちと、「このくらいは普通だ」という思いが交錯して、複雑な思いにかられてしまうのです。
相手の先入観を逆手にとって魅力を発信する
たまたまアナウンサーという仕事をしているだけで、「真面目」とか「しっかり者」と言われてしまう。これは結構なプレッシャーでもあります。
最初から“いい人認定”されていると、何をやるにもハードルがちょっと上がります。ちょっとミスをするだけで「できる人なのに、どうして?」と言われてしまい、減点方式の評価になりがちなのです。
先入観で「真面目」「しっかり者」と見られるのは、基本的に損です。しかし、そんな先入観にもメリットはあります。先入観を逆手にとって、ギャップを活用できるというメリットです。
「緊張」と「緩和」のギャップを利用する
例えば、アナウンサーがちょっとした「ボケ」を言うと、結構、笑ってもらえます。同じことを芸人さんが言っても普通なのに、アナウンサーが言うと笑いにつながることがあるのです。
私の記憶では、上方落語界を代表する人気落語家の二代目・桂枝雀師匠が「緊張と緩和のギャップによって笑いが生まれる」といった主旨のことを語っています。アナウンサーのような真面目に思われている人が、ちょっとだけボケても、緊張と緩和のギャップから笑いが生まれやすいということでしょう。
ギャップがあるところにチャンスがある
特に局アナは、仕事上しっかりする役割が求められます。しかもTBSというテレビ局には、他局に比べて堅くて昔気質というイメージもあるようです。だからこそ、ギャップを効かせやすい条件が整っています。
読者のなかにも「20代だから」「○○業界だから」といった先入観で判断されて、日々悔しい思いをされている方もいることでしょう。偏見は当然なくすべきですが、ギャップがあるところにチャンスあり。あえて先入観を逆手にとるのも一手です。