失恋をチャンスに変えて「自己肯定感」を上げるには

 私たちはときどき、わかりやすい意味や説明やメリットを求めすぎてしまうことがあります。「これって意味あるのかな?」「役に立つのかな?」「生産性あるのかな?」大人になり、社会の荒波の中で必死に生きようとすればするほど、「わかりやすいもの」を求めたくなってしまう。説明ができないもの、言語化できないものは信用できないと考えてしまう。

 たしかにそうやって目に見える形として整え、皿の上に出して差し出すのは、他者と思いを共有するには必要な作業です。一対一のときはもちろん、SNSなどのように、多くの人たちに思いを届けるときにはなおさら、「わかりやすい意味や説明」を付加しなければならないでしょう。

 けれどその一方で、自分の中だけに留めておくべきもの、言葉にしない方がいいものも存在するのです。名前のついていない感情や原理がこの世には無限にあって、それはこの資本主義社会では全く役に立たないかもしれません。

 けれど今回書き記したような恋愛に限らず、どんなに意味がなく役に立たないように見えることでも、体験してみれば、何かがわかるようになるのは確かです。あるいは、一見では理解できない作品を生み出している多くの作家、芸術家たちも、そういうことを、何とかして形に表したかったのかもしれません。

 何を言っているんだ? と疑問を持つ人も多いでしょう。

 この私のつぶやきも、読んでも何の役に立つわけでもない、わけのわからない文章です。誰にも理解されないかもしれません。

 でも、世の中で起こっていることを、人の心に起こっていることを、誰が事細かに、正確に説明できるでしょうか。

 私はこれだけは言いたいのです。そういう目に見えない、わけのわからない存在を、もっともっと愛そう。もやもやと心臓の上で浮遊し続ける恐れや不安や嫉妬や怒りごと、全部ひっくるめて自分を愛そう。私たちを、世界を愛そう。脅威として排除しようとするのではなく、ともに歩む道を選ぼう。

 目に見えるものだけに、頼るのではなく。

 たまにはいいでしょう、意味がないことに時間を費やしたって。役に立たなくても、意味がなくても生きていたって。「意味のない自分」を愛せるようになることこそ、本当の意味での「自己肯定」と言えるのではないかと、私はそう思うのです。

まさかの理由でフラれた女が自己肯定感を取り戻すまで川代紗生(かわしろ・さき)
1992年、東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。
2014年からWEB天狼院書店で書き始めたブログ「川代ノート」が人気を得る。
「福岡天狼院」店長時代にレシピを考案したカフェメニュー「元彼が好きだったバターチキンカレー」がヒットし、天狼院書店の看板メニューに。
メニュー告知用に書いた記事がバズを起こし、2021年2月、テレビ朝日系『激レアさんを連れてきた。』に取り上げられた。
現在はフリーランスライターとしても活動中。
私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)がデビュー作。