経済のこと、会社のこと、政治のこと。
なんとなくわかっているつもりでも、「誰かに説明できるか」と言われるとむずかしい。
基本的なことをしっかり理解するためには、どうすればいいのだろうか。
わかりやすいニュース解説でおなじみの池上彰さんに
「なぜ経済のことを知っておく必要があるのか」
「どこから経済のことを学べばいいのか」
について伺った。
社会人としてこれだけは知っておきたい「超」基本だけをまとめた書籍
『経済のこと、会社のこと、政治のことよくわからないまま社会人になった人へ』から
本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。
まず思い浮かべるのは「お金」のこと
社会人になって世の中に出ると、いやがおうでも経済の知識が必要になります。
学生時代はそれほど考えてこなかった経済のこと。もっと勉強していればよかったと後悔している人はたくさんいるでしょう。
毎日の暮らしから経済のことを考えるときに、まず思い浮かべるのは「お金」のことです。
会社から給料が支払われ、その給料から税金を納める。手元に残ったお金は、買い物をしたり、預金をしたり、投資で増やそうとしたり──。
商品やサービスの代金を得て、会社は収益を上げます。そのお金で税金を納め、新しいビジネスに投資をし、より多くの人を雇ったり、より高い給料を支払ったりします。税金によって国家の仕事は成り立ちます。
このように世の中のお金が回っていくことで、経済は動きます。
すでにあなたは経済を支える一員です。
経済がどのように動いているのか、しくみを理解すれば、新しいビジネスを生み出したり、自分の納得がいく買い物をしたり、さまざまな投資をおこなったり、あなたの可能性も広がっていくことでしょう。
経済ニュースを読んでも正直よくわからないという人も、「どういう流れでお金が回っているのか」を知ると、「我がこと」として楽しく経済を理解できるはずです。
私の書いた『経済のことよくわからないまま社会人になった人へ』では、「買う」「払う」「借りる」「投資する」といった、あなたが普段行っている(あるいは関心を持っている)ことから、経済をひもといています。
変化の激しい今、何を買えばいいのか、どういったサービスを利用すればいいのか、どこに投資すればいいのか、どんなビジネスを生み出せばいいのか、どんな会社に勤めるのがいいのか、確実な「正解」はありません。
正解がないということは、たくさんの選択肢から、自分で選べるということです。
であれば「今、自分が考えるベストな選択」をしたいと思いませんか?
そのためにも、経済について知っておく必要があるのです。
身のまわりから世の中へ。
関心の輪を広げていく
自分の身のまわりから経済を考えると、次に目を向けたくなるのはより大きなものです。
例えば投資を考える際に、最初は自分に関係のある企業の株を買おうと思っていたけれど、円安に強い企業のほうがいいだろうか、あるいは世界中でビジネスを展開している企業のほうが将来性があるのか、といった具合に視野がどんどん広がっていきます。
景気についても同様で、日本国内のことだけを見るのではなく、世界の動きの中で日本はどうなっているのか、どうなっていくのかを見ていく必要があります。
こうして、おのずと世界経済にも感心の目が向けられていくはずです。
社会人になったものの、経済のこと、知っているようで意外と知らないな、と思ったあなた。
何から学べばいいのかと悩んだら、まずは日常の「我がこと」からお金の動きを知り、さらには世の中の動きやしくみへと一つずつ関心の輪を広げていくといいでしょう。
1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、73年にNHK入局報道記者やキャスターを歴任する。
94年から11年間にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役を務め、わかりやすい解説が話題になる。2005年、NHK退職以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍。2016年4月から、名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在も11の大学で教鞭を執る。
『経済のことよくわからないまま社会人になった人へ』『会社のことよくわからないまま社会人になった人へ』『政治のことよくわからないまま社会人になった人へ』は累計70万部超えのベストセラーを加筆・修正の上、3冊シリーズとしてダイヤモンド社より復刊したものである。