3K職場のイメージを払拭する3つのこと

 当時はバブル経済の真っ最中で、僕らの仕事は3K職場(きつい、危険、汚い)の典型と見られていました。伝統産業に対する偏見を払拭するために、そして、「鋳物の魅力」「地域の魅力」「職人の実力」を知ってもらうために取り組み始めたのが、次の「3つ」です。

①技術を磨いて問屋の信頼を得る
②自社製品を開発・販売する
③工場見学を受け入れる(産業観光に力を入れる)

①技術を磨いて問屋の信頼を得る

 高岡の鋳物産業は、多くの伝統工芸の産地と同じく、問屋制です。各工程を担当する専門業者の分業によって成り立っています(問屋が中心となって、鋳物づくりの工程を取りまとめる)。能作は、「鋳物素材を成形して、問屋に卸す生地メーカー」です。生地というのは、着色、研磨、彫金など、加飾をする前の製品のことです。

 より多くの注文を受けるためには、まず問屋に認めてもらう必要があります。しかし、当時の能作は、問屋から嫌がられていました。なぜなら、製品のクオリティが低く、能作がつくる鋳物は、汚かった(傷が多かった)からです。

「技術を売る立場」である以上、技術力こそが生命線です。

 そこで、競争相手の同業者にも教えを請いながら、鋳物づくりに明け暮れました。

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