コロナ禍のリモートワークなど生活スタイルの変化により注目されたのが、資産形成に対する関心が高まったこと。特に、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISAの口座開設が急増した。そんな状況の中、つみたてNISA本の決定版ともいえる『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)が3月16日に発売。本連載では、つみたてNISAを利用して長期投資や資産形成をしてみたいという人に向けて、失敗しないつみたてNISAの賢い選び方・買い方について、同書から抜粋して公開する。「つみたてNISAってなに?」という投資ビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすくお伝えしていくので、ぜひ、お付き合いください。

日本経済は緩やかに衰退し、将来、円安になる可能性が高いPhoto: Adobe Stock

円建て資産ばかりを持つことは、リスクがある

 まず、国際分散投資をするのはなぜかということをご説明しましょう。私が国際分散投資を提唱しているのは、長期的に日本の円建て資産ばかりを持つことが、自分自身の資産のリスクを回避するのにつながらないと思っているからです。

 以前にも触れましたが、日本経済はこれから人口減少によって、労働生産性をはじめ様々な構造改革が進められない限りは、衰退への道をたどっても不思議ではありません。

 衰退すれば、当然のことですが、日本の通貨である円は売られます。つまり円の価値が下がり円安になるのです。

 そのようなリスクがあるのにもかかわらず、保有資産の大半を円建て資産で固める必要はないでしょう。

為替レートは円安・円高を繰り返すが、
長期的に見れば、ほぼニュートラルになる

 また、長期的に見れば、為替は平均回帰する可能性があります。

 平均回帰とは、確かに為替レートは円安、円高を繰り返すものですが、長期的に見れば、ほぼニュートラルになるという考え方です。確かに、超長期のドル円を見るとそれははっきりと分かります。

 戦後、1971年のニクソンショックを経て、それまで1ドル=360円だったドル円レートは1ドル=308円に切り上げられ、1973年からは変動相場制に移行しました。これを機に、日本経済の強さが評価されるにつれどんどん円高が進み、1995年には1ドル=79円75銭をつけました。

 その後、円安・円高を繰り返していますが、ワイドにみれば1ドル=150円から80円の間、もう少し狭くみれば、ここ15年くらいは1ドル=120円から75円の間で推移しています。

 ということは、仮に今後、1ドル=80円割れくらいの円高が来たとしても、それは特に驚くほどのものではありませんし、いずれ120円に向かって円安が進むというのが、平均回帰の観点から見た時の私の為替に対する見解です。

 ましてや、つみたてNISAは20年の単位で投資していくものですから、ますます平均回帰する可能性が高いともいえるでしょう。その意味でも、為替ヘッジはあまり意味がないと考えているのです。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言。国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を9年連続受賞。口座開設数16万人、預かり資産5000億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)他多数。