映像は通信指令の担当者を経由して、現場に向かう警察官に共有される。ただ映像送信前に「著作権の放棄」などを求める必要があり、実際に映像を送信するまでにタイムラグが発生するようだ。

 原則として1週間後に自動的に消去されるが、捜査で必要と判断された場合は、刑事訴訟法に基づく手続きを経て、捜査資料として活用される。英語や中国、韓国語にも対応するが、スマホの操作に不慣れな高齢者や、事故を目撃した直後でナーバスになっている通報者とのやり取りも予想され、施行期間でこうした改善点を見直していく。

中高年男性に多い
常軌を逸した110番通報

 前述のデスクによると、今回のシステムを導入するきっかけとなったのは、2008年に栃木県鹿沼市で発生した軽乗用車の水没事故だという。豪雨による冠水で「助けて」という110番を受信したが、情報が錯綜した警察は出動せず、結局、女性は運転席でスマホを握りしめたまま冷たくなっていた。

 こうした取り組みは、警察庁の官僚主導ではなく、現場を知る地方警察が先行するのが一般的だ。兵庫県警は20年10月から独自にこのシステムを導入し、今年7月までに495件の映像を受信。傷害事件の目撃者からの映像で、逃走車両や容疑者の特徴を割り出して逮捕につなげたり、車両火災で現場に急行した警察官に的確な対応を指示できたケースもあった。

 110番を巡っては、警察庁は今年1月10日の「110番の日」に発表した21年の受理数が784万6738件と発表。そのうち19.3%は緊急対応の必要がない内容で、また、75.8%がスマホなど携帯電話からだったという。