殺到する通報、現場への指示。新人記者の筆者がパニックになりアワアワしていると、案内していた広報室の課長補佐(警部)がダイヤルの黒電話を「ゼロ発信だぞ」と渡してくれた。内線専用なので、最初に0をかけないと外線に通話できないのだが、新人記者に花を持たせようとしてくれたのは分かった。

 デスクに「銀行強盗です。俺、本部の通信指令室にいます。全部、聞こえてます」と告げると「よし、現場には2番手(サブキャップ)を行かせる。お前はそこにいろ」。さまざまな情報が入ってくる。捜査1課と機動捜査隊の筆頭課長補佐(警部)が来て「おい、なんで記者がいる。追い出せ」と叫ぶ。

 ところが、広報室の課長補佐は捜査1課での経歴が長く、2人の先輩だったらしい。「やかましい。このド新人記者に勉強させてやれ」と切り返すと、静かになった。2人は「仕方ねぇ。良く見ておけ」と舌打ちし、通信指令の担当者を怒鳴りつけていた。

 この事件は緊急配備で主要道路を完全封鎖し、スピード逮捕になったが、通信指令の緊張感にクラクラした記憶がある。そして、担当者(女性警察官が多かった記憶がある)の冷静な対応は「クール」という表現が当てはまるほど、格好良かった。

 筆者はこれまで、ダイヤモンド・オンラインで警察の不祥事などを追及する記事を多く書いてきたが、それは一部の不届き者の話だ。多くの警察官は真面目に仕事をしている。分別がつくはずの中高年のオッサンが、暇や寂しさをまぎらわせようと「酔っていたずら110番」をするのは、やめていただきたいものだと思う。