投資の「理解力」を身に付けるには、どうしたらいいのか。大きく分けて、独学と、グループで勉強する方法がある。強靱な知性と、自分の理解を自分で疑うことができる高度な客観性を持っている人の場合、独学でもいいかもしれないが、投資の原則にはほうぼうに誤解しやすいポイントがある。グループ学習が有効だろう。

 ファンドマネジャーやアナリストを含めて、多くの金融マンは、投資の知識をグループ学習してきた。家で文献を読んだり、通信教育に取り組んだりした人は多かろうが、理論と現実との対照や、疑問点については、仕事の経験や同僚との会話を通じて理解やその確認を得てきた。

 グループ学習となると、読書会形式が進めやすい。今後の判断の基礎になる「理解力」の獲得が目的だから、少数の基本書を題材に、内容を徹底的に理解するタイプの勉強会がいいだろう。

 例えば、以下のようなカリキュラムはどうだろうか。

 基本となるテキストとしてはバートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』(井出正介訳、日本経済新聞社)を使う。

 1回目のレポーターは、同書の冒頭付近にある「バブル」について報告する。テキストの記述を追うのに加えて、日本のバブルについて、それがどのようなものであって、投資家としてはどう判断すべきだったのかについて、事例を調べて報告すると有益だ。

 バブルは1回ではこなし切れないテーマだろう。先般の金融危機に至った大きなバブルの内容と、バブルに関するパターンの総括を2回目に取り上げたい。

 3回目は、一部の素人がカルト的にはまりやすいテクニカル分析が題材だ。チャート分析にはどのようなものがあって、しかし、それがどうして投資の改善につながらないのかに関して、知識をまとめることと論理的な理解が必要だ。

 4回目は、ファンダメンタル分析の手法と有効性を取り上げる。この場合には、前回以上に、世間で用いられている方法の内容と、その有効性に関する理解が要る。

 5回目では、リターンとリスクの概念と、金融的な意思決定の枠組みについて丁寧に理解する。筆者の経験では、このパートが難所であることが多い。