リンゴをさらに良いリンゴにする教育
以前Ethical leader(倫理的なリーダー)とは何か学ぶ講義の中で、こんなことを講師に問いかけました。「例えば北欧で私のような日本人が倫理的なリーダーになるためには、日本の倫理を時には捨てて、北欧の倫理観を持たなければいけません。母国の倫理を捨てるリーダーが、本当に倫理的なリーダーと呼べるのでしょうか」
そのときの講師の答えは、「君は倫理的なリーダーになれるかもしれないが、本物のリーダーではない。日本の倫理で何を残して捨ててもよいと思えるのか、それを判断して日本と欧州の倫理が統合したリーダーのあり方を考えてみたらどうか」というアドバイスを受けました。
「リンゴをバナナにするのがこの学校の方針ではない。リンゴをより良いリンゴに磨き上げるのが大切だ」。必ずしも欧州で理想とされるリーダーを育てることが重要ではなく、私個人がどのようなリーダーになりたいのかを考えさせ、明確になるように導いてくれるのです。答えは一つではありません。理想はあくまで理想であり、自分のスタイルを見つけることが大切だと実感するのです。
それから私は日本では「KY(空気が読めない)」と思われる状況でも他人と異なる意見を持っているときは、摩擦を恐れずストレートな表現で主張するようになりました。ただし、その意見を主張することが周りにとって本当に必要かどうか、一度考えてから必要であると思ったときだけ意見を述べます。自分と違う意見だからといってむやみに議論を仕掛けることはありません。
すると、最近ドイツ人のチームメイトから「意見を主張しているのに、必要なときは誰も気がつかないくらいとても自然に進むべき方向にみんなをリードしてくれる、そのバランスが素晴らしく、ユニークだ」というフィードバックを受けました。
周りの状況を冷静に観察することを忘れず、婉曲的な表現は避けて意見を主張する回数を増やしたら、日本の良いところと欧州の良いところを足した自分らしい新しいリーダーシップのスタイルを見つけることができたのです。ビジネススクールで学ぶリーダーシップも、The Kaospilotsならここまで個人レベルに落として深く学べるのです。