デザイン思考とクリエイティブインテリジェンス

 The Kaospilotsでは新しいアイディアやイノベーションを生むためにデザイン思考を学びます。デザイン思考とは、デザイナーの感性や手法を体系化したもので、頭の中に浮かんだアイディアを形にしたり、調整することでこれまでのマーケティング手法では生まれないような新しいアイディアやイノベーションを生む機会を作ります。

 デザイン思考については、基本的な考え方は同じでも細かいプロセスの定義が異なることがあり、様々なスタイルがあります。The Kaospilotsの1年目で学んだのは、「ダブルダイヤモンドイノベーションモデル」と呼ばれるものです。

 右の図はこのモデルを使ったときの思考のプロセスを形で表現したものです。ダイヤモンドの形は思考が開いているのか、閉じているのか状態を表しています。四角は何らかの調査の結果を、フレーム化、評価するプロセスを表しています。

 思考が開くステージですべきことは、間違いをおそれず思いついたことをとにかくアウトプットすることです。思考が閉じる段階では、現実的に実行可能か試す、考えることでアイディアを取捨選択します。そこから見えてきたことをフレーム化し意思決定を行います。このプロセスを最低2度踏むスタイルがダブルダイヤモンドイノベーションモデルです。

 さて、このモデルを使えばどのように新しいアイディアが生まれるのでしょうか。先日デンマークの広告代理店がクライアントで取り組んだプロジェクトを例に挙げたいと思います。与えられた課題は、クライアントの会社の前に流れている町のシンボルでもある川を使って彼らのビジョンを表現し、地域に貢献できるプランを考えて実行することでした。

 町の人やクライアントのインタビュー結果をもとに、「どうすればクライアントと川をエキサイティングかつ合理的な方法でつなげることができるのか?」というフレームをまず考えました。その中で、様々な手法を使ってブレインストーミングで100個のアイディアをまずはチームで出しました。

 グループディスカッションでアイディアを評価しながら100個から20個、10個と段階的に絞り込み、最終的に選んだ3つのアイディアをクライアントにプレゼンします。彼らのフィードバックをベースにアイディアを再開発し、ラピッドプロトタイプ(身の回りのものを使ってアイディアを簡単に形にしたもの)による調査の結果をもとに、再度ブレインストーミングでアイディアを開発します。そして最終的に一つのクオリティーの高いアイディアを選び開発に進めるのです。

 最終的に開発したアイディアとは「Wish thinking (願い事思考)」というタイトルのもの。60人の町の人に「あなたの願い事は何ですか?」とインタビューし、その答えを彼らの写真と共に表現して、川を舞台に展示しました。

 消費者インサイトを重視するクライアントのビジョンを表現しつつ、クリスマス前の1年が終わろうとしている時期に、自分の願いとは何か改めて考えたり、周りにシェアする機会を地域の人々に提供することができました。

 またこれまで町のシンボルの川は「景色」として存在していたところを、美術館でアートを楽しむようなスペースとして使用したことでも注目を浴びました。結果的に地域の新聞やウェブサイトで紹介され、クライアントのフィードバック、プレゼンテーションの結果、最高点の成績を獲得しました。