ただ話すだけなのに「頑張る」「疲れる」「気を使う」……。日々のコミュニケーションで苦戦苦闘している日々よ、さようなら。これからは、説得しようと力業で勝負する必要はありません。自ら動くのではなく、相手に動いてもらい、自分の思い通りの結果に導けばいいのです。
それを可能にしたのが、大久保雅士著『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』だ。「トップセールス」の実績を持つ「メンタリズム日本一」が生んだ至極のコミュニケーションスキルが詰まった一冊。本書より、徹底的に磨かれたノウハウを一部抜粋し、「口下手で人付き合いが苦手」な人でも今日からすぐできる方法を紹介する。

なぜ人は「あざとい」とわかっていても、魅了されるのか?Photo: Adobe Stock

あざとさを磨くと、相手と距離を縮めることができる

「あざとい人」は仕事もできるし、男女に関係なくモテます。

「したたかさ」「ずる賢さ」とも言い換えられる「あざとさ」は、相手を喜ばせることに効果的で、ビジネスで相手と距離を縮めるときに使えます。俗にいう処世術ですね。

 特に、相手の認知を示すときに使うと、相手との距離がぐっと近くなります。

 元首相の田中角栄氏は、「名前を覚えることが人の心をつかむ道」として信じており、各省庁の幹部名簿を隅々まで記憶し、名前だけでなく出身地や出身校、同期の繋がりまで暗記したうえで、「〇〇くん、元気か?」と話しかけたそうです。首相になるような人に名前を覚えられているだけで喜び、田中角栄氏に心酔していった新人議員が続出。そんな田中角栄氏でも名前を忘れ、「あれ? この人誰だっけ?」となることがあったようです。

 そのときは、「君、名前は?」と素直に聞き、相手が「佐藤です」と答えたら、「それは知っている。下のほうの名前だ!」と言って、相手のフルネームを聞き出す形で、「私はあなたを知っている」と示したそうです。

 相手に「名前を忘れられてしまった」と思わせないためのさりげない気遣いまでしていたようですね。世間にも政治家にも人気があったのがうなずけます。

 優秀なアイドルも、これを上手に使いこなします。私はAKB48などの握手会の運営をしていた時期があるのですが、トップアイドルはさりげなくもあざとい気遣いを連発していました。

 握手会に来る熱心なファンを記憶し、「いつもありがとう」と感謝を伝えているのは有名な話ですが、中にはそれをスタッフにも徹底する子もいるのです。それもメディアに登場する有名なアイドルが「私はあなたを知っている」と声をかけてくれるのです。こういう気遣いがうまい人が売れていくんですね。

 また、握手会の列を整理するスタッフに「疲れていませんか?」と声をかける子もいます。明らかにアイドルの子のほうが疲れているのに。こういう気遣いができる子は、スタッフからの人気もありました。スタッフもよくしてくれたアイドルの評判を口コミで流すので、結果的に「スタッフにも気遣いができる」ことはファンも知ることになるのです。

 このように「相手の認知」を示す形で距離を縮める人に共通するのが、「徹底すること」です。やると決めたら常に意識します。中途半端にはやりません。また、相手の名前だけでなく、以前のちょっとした会話内容やそのときの出来事を覚えておき、「相手の認知」を示します。第2章「去り際こそ、話を途中でぶったぎって帰る」にあった会話を振り返る言葉は有効ですね。

「先日お話しされていた本、さっそく買って読んでみたら、とても面白かったです!」
「SNS、拝見しています。かなり幅広く活動されているのですね!」
「前回伺ったプロジェクトの進捗状況どうですか? すごく楽しみにしています!」

 相手は「知ってくれていた」「覚えていてくれた」と感じ、距離を縮めることができます。

 私がお手伝いをした飲食店では、徹底して来店客の好みを把握させました。2回目以降の来店客の接客時には、「前回注文された○○はいかがでしたか? 気に入っていただけていたら本日もご用意できますので仰ってください!」などと伝えるためです。お客様にも「覚えていてくれたんだ」「いい店員さんだな」と感じてもらうことができ、相手の懐に一歩踏み込む接客ができます。

 さらに、スタッフとお客様のコミュニケーションも増えるので、結果的に注文も増加し、売上アップにも繋がっていくのです。

 あざといテクニックとわかっていても、徹底し、突き抜けることで相手は嫌な意味でのあざとさを感じなくなります。

 徹底して相手を喜ばせ、距離を縮める。これはビジネスを成功に導く秘訣です。

(本原稿は、書籍『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』から一部抜粋、編集したものです)