大した実力もないのに、なぜか上司や同僚、取引先からの覚えがめでたくて、高く評価されている。そんな人がどの会社にも1人や2人いるのではないだろうか。なぜ、そんな「大して実力もないやつ」が成功を収めているのか? その秘密を解説している本がある。『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』だ。本書では、著者のふろむだ氏が「実は、世の中は実力主義なんかにはなっていない」という残念な現実を踏まえたうえで、リアルな成功法を教えてくれる。本記事では、本書の内容をもとに、「人は他人をどのように評価しているのか」「なぜ実力以上の評価を得ている人がいるか」などについてご紹介する。(構成:神代裕子 初出:2022年11月19日)

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっているPhoto: Adobe Stock

世の中は、実力主義なんかにはなっていない

「世の中は、実力主義だ」。そう言われる時代になった。

 昔と違い、年功序列ではなく、若くても実力があれば出世できる。女性だって、実力があれば管理職や役員になれる。

 さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、フルリモート可の仕事も急激に増えた。

 地方に住んでいても、その仕事をするに値する能力があれば、東京や大阪にある会社の仕事ができる。そんなふうに社会は変わってきた。

 もちろん、まだまだ社内の制度や風土が追いついていない会社も少なくないけれど、「昔よりも、実力が評価される世の中になってきた」と思っている人は多いのではないかと思う。

 それを真っ向から否定し、「世の中は実力主義なんかにはなっていない」と突きつけてくるのが、『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』だ。

 本書の著者・ふろむだ氏は、伝説のブログ「分裂勘違い君劇場」の著者である。彼は、「自分より実力のない人たちが、自分よりも評価されているなんてことは、いくらでもある」と主張する。

 なぜ、そんなことが起こるのか。その理由は「脳」や「意識」の特性にあるのだと言う。

実力がなくても、高く評価される人がいるワケ

 どの会社にもいる、目立って評価される人。

 周りから「あの人は仕事ができるから」と褒められ、大きなプロジェクトを任されたり、いち早く出世したりしているが、仕事の能力だけを客観的に見ると「そこまで評価されるほどの人だろうか」と疑問に感じたことがある人もいるに違いない。

 そして、その疑問は外れていないと、ふろむだ氏は次の例を挙げて解説する。

 1974年にカナダで行われた選挙を調査したところ、イケメンの政治家は、そうでない政治家の2.5倍もの票を獲得していたということがあった。

 ただし、ここで重要になるのは、「イケメンの政治家に投票した理由」だ。彼に投票した人のうち、73%は「私が彼に投票したのは、彼がイケメンだからではない」と思っていた、というのだ。「イケメンだから投票しちゃった部分もあるかな」と思っていたのは、14%にすぎなかった。

 これと同様のことは、2001年、9.11テロが勃発した時の、ブッシュ大統領への支持率にも見られたそうだ。

 テロが起きた際、ブッシュ大統領の「テロ対策への評価」が上がるとともに、直接関係のない「経済政策への支持率」まで、47%から60%に跳ね上がったのだ。

 これらの事例からわかることは「容姿が優れている」「テロ対策が優れている」といった”ある特徴”が、漠然と「その人間が全体的に優れている」というイメージに変換されてしまっているということだ。

 しかも、この変換は無意識のうちに行われているというのだから、非常に恐ろしい話である。

知能が高く、有能な人であっても、自分の無意識が、自分の知らないところで、勝手に脳内の評価値を書きかえるのを、防ぐことはできない(P.8) 

 1つの優れている点から、無意識のうちに「全体的に優れている人」と評価されてしまう。とんでもないことだが、当人にとってはなんともラッキーな話ではないか。

 本書では、これを「思考の錯覚」と表現している。

「錯覚資産」が生み出す残酷なサイクル

 このように「プラスのイメージを引き起こすもの」によって引き起こされた、「全体的に優秀」という「思考の錯覚」の影響は大きい。

 他人が良い方に勘違いしてくれることが、「まるで資産のように、生涯賃金に換算して、何千万円、何億円ものお金を生む」とふろむだ氏は語る。

ここで重要なのは、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」は、一種の資産として機能するということだ。本書では、これを「錯覚資産」と呼ぶ。(P.14) 

 一見、ただの「勘違い」にも見える錯覚資産だが、この錯覚資産の運用がうまい人と下手な人では、時間とともにどんどん差が開いていくと言う。

 それは、次のようなサイクルを生み出すからだ。

 例えば、ある会社に本当に実力がある「実力タイプ」と、実力はないが、実力があるように見せかける能力がある「錯覚力タイプ」がいたとする。

 その場合、残念なことに、会社は「錯覚力タイプ」を有能だと認識する。

 そうなると、「錯覚力タイプ」の方が、「実力タイプ」よりも、良いポジションや成長のチャンスを手に入れられる。

 その「錯覚力タイプ」はエリートコースに乗って、いい先輩から丁寧な指導を受けて、重要な仕事を任され、みんなに助けられて実力アップの機会に恵まれる。

 一方、チャンスが与えられない「実力タイプ」は、実力があるにもかかわらず、ろくな経験を積むことができずに伸び悩む。

 その結果、数年後には、実力においても「錯覚力タイプ」が「実力タイプ」を追い抜いてしまうのだという。しかも、そうなると、「錯覚力タイプ」はさらにもっとよい成長機会を与えられる。

「錯覚資産によってよい環境が手に入り、よい環境によって実力が育ち、実力があるからそれが成果を生み、その成果を利用してさらに錯覚資産を手に入れる」というループが回ることで、錯覚資産と実力が雪だるま式に増えていくという構造があるのだ。(P.25) 

「実力タイプ」からすると、なんとも納得のいかない話である。

 ふろむだ氏の「生涯賃金に換算して、何千万円、何億円ものお金を生む」という主張も、決して誇張ではないことがじわじわと感じられてくる。

「錯覚資産」を味方につけ、人生をプラスに転換

 もし、あなたが「実力タイプ」で、日頃どうにも正しく評価されていないと感じるのであれば、それはこの「錯覚資産」を味方につけることができていないからかもしれない。

 でも、心配することはない。世の中は決して実力主義になっていないことも、「錯覚資産」によって評価にゲタをはかされている人がいることも、これでわかったのだから。

 あなたも、今から「錯覚資産」を手に入れればいいのだ。

 どうすれば「錯覚資産」が手に入るかについては、本書を手に取ってみてほしい。「思考の錯覚」の作り方や操作・運用の方法、どうすれば仕事や人生においての成功確率を飛躍的に上げることができるかなどが詳しく書いてある。

 人生をくすぶったまま終えるのか、「錯覚資産」を手に入れて、周囲の評価を大きく変えるのか。

 それは、あなた次第だ。