コロナ禍のリモートワークなど生活スタイルの変化により注目されたのが、資産形成に対する関心が高まったこと。特に、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISAの口座開設が急増した。そんな状況の中、つみたてNISA本の決定版ともいえる『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)が3月16日に発売。本連載では、つみたてNISAを利用して長期投資や資産形成をしてみたいという人に向けて、失敗しないつみたてNISAの賢い選び方・買い方について同書から抜粋して公開。「つみたてNISAってなに?」という投資ビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすくお伝えしますのでお付き合いください。【投資信託・つみたてNISAがよくわかるQ&A】の10回目をお送りします。

【投資信託・つみたてNISAがよくわかるQ&A】Q.1020年も続ける自信がありません。「長期投資」とは何年くらいを指すのでしょうか?Photo: Adobe Stock

【Q10】20年も続ける自信がありません。

長期投資」とは何年くらいを指すのでしょうか?

 長期投資をしましょう、という話をすると、よく返ってくる質問は、「長期投資って何年間、運用すればいいんですか?」というものです。

 ある金融機関では、投資信託を購入しようとしている顧客に対して、「投資信託は長期投資が鉄則ですから、できれば3年から5年は保有してください」と説明しているそうです。

 3年から5年の運用期間を長期投資と言ってしまうところに、投資信託を販売している金融機関の問題点があるように思えます。証券会社や銀行を通じて多くの投資信託が販売されていますが、その販売スタンスにこそ、今の投資信託業界が抱えている大きな問題点があるのです。

 改めて、長期投資の定義について考えてみましょう。

「永久に運用すること」こそ、
本当の長期投資

 私は、長期投資に期限はないと考えています。3年から5年程度の運用期間は、長期投資とは言えません。私が考える長期投資の定義からすれば、3年から5年程度では、中期投資にも含まれません。極端な言い方をすれば、短期投資に含まれると考えても良いでしょう。

 では、私が思う長期投資というのは、どのくらいの期間を指すのか。それを、具体的に言うのであれば、「永久に運用すること」こそ、本当の長期投資だと思うのです。

 スイスのプライベートバンクなどになると、それこそおじいさんの代からひ孫の代を超えて、何代にもわたって、その一族の財産管理を行うということが、ビジネスとして成り立っています。それに近いイメージを思い浮かべてください。

 もし、あなたがこれから長期投資を志し、毎月数万円程度ずつ積み立てていったとします。その目的は、あなた自身の老後生活に使うお金を貯めるためかもしれません。

 でも、だからといって、自分が会社を退職した時から、すっぱりと積立投資をやめたり、投資そのものから手を引いたりするのが正しい行動かというと、それは間違いです。

 定年を迎えてからも、もし資金的に余裕があるのであれば、積立投資を継続していけばいいし、あるいは積立投資はやめたとしても、引き続き投資信託などを活用した運用は継続していくべきでしょう。

投資信託は、解約することなく
そのまま相続することが可能

 前述したように、これからの時代は公的年金の受給額が減らされたり、医療費負担が増やされたり、あるいはインフレで生活レベルが低下したりするリスクが想定されるので、運用を継続しておいたほうが、こうしたリスクから大事な資産を守ることにつながる可能性があるからです。

 そして、お金が必要になった時は、随時、ファンドの一部を解約することによって、現金を手にすればいいのです。投資信託は一部解約が可能なので、当面、必要な資金だけを解約し、残りはそのまま運用を継続させることができます。

 その結果、財産を全額使い切らず、残して亡くなられる方も大勢いらっしゃると思います。でも、それはそれでいいのではないでしょうか。

 投資信託は、解約することなくそのまま相続することが可能です。残った財産は、次の代に引き継いでもらえばいいのです。運用期間が無期限のものを選ぶのは、そのためでもあります。

 前述したように、プライベートバンクに財産管理をしてもらっている富裕層などは、自分が残した財産を、子々孫々がきちっと引き継いでいけるように、さまざまな対策を講じています

 それと同じように、自分の代で使い切れなかったとしても、その財産は自分の子どもや孫に引き継いでもらって、さらに長期投資を続けることで、どんどんお金持ちになってもらいましょう。

 また、自分の子どもや孫たちに、世の中のためになる、より良いお金の使い方をしてもらえるようにするためにも、自分がまだ健康なうちに、子どもたちにお金の使い方をきちっと伝授する必要があります。

 あるいは、資産を子孫に残すのではなく、社会に寄付するという方法もあるでしょう。自分が生きている間はずっと運用を継続し、自分が他界するときには、その運用で増やした資産の多くを広く社会に還元するために寄付するというのは、なかなか格好のいいお金の使い方だと思います。

 長期投資というのは、そういう格好のいいお金の使い方をするためのきっかけになります。投資を始める前から運用期間を決めてしまうようでは、長期投資とは言えません

【A10】本当の長期投資に「ゴール」はありません。20年でも短すぎるくらいです。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言。国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を9年連続受賞。口座開設数16万人、預かり資産5000億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)他多数。