『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。(初出:2019年9月5日)
相手の話しかたや状態、呼吸などに合わせるのが基本
クレームのなかでも、特に苦手としている人が多いのは、対応にあたった途端、怒鳴りつけてくるお客さまではないでしょうか。理由もわからずに怒鳴りつけられ、恐怖で声が震えたり、思わず涙ぐんだ経験のある人もいると思います。
こんなとき、多くの人がお客さまの興奮を鎮めようとして、落ち着いたトーンで話すなど冷静な対処を心がけますが、じつはそのことがお客さまの怒りを余計に増幅させます。なぜならば、お客さまの目には慇懃無礼な態度に映ってしまい、「自分がSOSを発しているのに、まるで状況がわかっていない!」と感じるからです。
では、どうすればいいのでしょうか。相手がまくし立ててくるならこちらも早口で、大声で恫喝してくるなら、声の大きさも遠慮なく合わせてください。ひと言で言えば、お客さまに合わせて、「怒鳴り返すように謝る」のです。
そんな対応をして、本当に大丈夫ですか……とよく聞かれますが、ご安心ください。今まで失敗した例はありません。「ウマが合う」「波長が合う」といった言い方をするように、そもそも人は、声の大きさや話のテンポ、しぐさなど、自分と似た相手に無意識に好感を持ちます。このことは心理学的な実験でも確かめられていることです。それゆえ、怒鳴り返すのは、理にかなった対処なのです。
また、怒鳴るお客さまのほとんどが、意識的にせよ無意識にせよ、こちらを萎縮させて交渉の優位に立つことを、心のどこかで期待しています。「怒鳴れば、相手は引いて謝ってくるだろう」と思っているのです。
ところが、そうした期待を裏切って怒鳴り返すように謝ると、お客さまは虚をつかれ、一瞬、怒りを忘れます。後述するように、その一瞬がお客さまを落ち着かせるアクションに移るチャンスです。
なお、謝るといっても、こちらの非を認めるわけではありません。「わざわざご足労いただいて申し訳ありません!」といったように、謝る対象を限定する言葉(この例では「ご足労いただいて」)をつけて、クレームの本題とは別のことで謝ります。状況もよくわからないうちに、本題について謝って、非を認めた事実を作らないように注意してください。