組織文化とシステム思考
組織を構成する3つの要素

ダイムラー氏

ダイムラー 1つ目は「パーパス」です。なぜこの事業をやっているのか(Why)。

 例えばUdemyは、冒頭にも申し上げたように「知識とスキルで人生をもっと豊かに」がパーパスで、そこに焦点を当てています。

 特に若い世代は、会社のパーパスをとてもよく見ています。「そこに対して自分はどのように貢献できるか」を考えているので、パーパスはシステムの構成要素として非常に重要です。

 2つ目は「企業の戦略」です。戦略は今まさにその企業がしていること、今その事業として取り組んでいること、フォーカスしていること(What)であり、目的、一定の成果、目指す指標などです。

 3つ目が「組織文化」です。先ほども申し上げたように、人々がどのような働き方をするか(How)ということです。

 組織を構成する「パーパス」「企業の戦略」「組織文化」の3つの要素をつなぎ、すべてに通底するのが継続的な「学習」だと思います。

 学習し続け、スキルを向上させ続けていくことが、この3つの要素を動かす原動力となります。これら3つの要素がよりよく機能することで、組織というシステム全体を強化できるのです。

――日本企業の教育への投資額や割合は、諸外国と比べても低いといわれています。リスキリングの体制を整えることにあまり前向きでない企業の経営陣をどう説得するべきでしょうか。

ダイムラー 今はまだ多くの企業が、「従業員が満足して働いてくれていればいい」というぐらいに思っているかもしれません。しかし、早晩、それだけでは事業が立ち行かなくなります。

 今後ますます事業環境が変化して、競争も激しくなるなかで、ビジネスの変化に追いつくために新しいスキルは必要不可欠になります。「従業員のスキルの底上げが急務だ」ということが、ほかならぬビジネスの現場から上がってくるはずです。リスキリングのニーズをどの企業も認識し始め、経営陣もわかってくるでしょう。それがわかれば、リスキリングをするというモチベーションにつながるはずです。

メリッサ氏

――日本の組織にもCLOを置くべきでしょうか。

ダイムラー 置くべきだと思います。Udemyは7年間、日本で事業を進めてきて、延べ100万人の受講者を得ています。継続的な学習に対する関心はますます高まっていると実感しています。かつての1回きりの研修から、もっと継続的な学びへ進化するという段階に日本は来ています。

 さらに、岸田首相がリスキリングに5年間で1兆円の投資をすると明言するなど、日本政府が正式にリスキリングをサポートすると表明したので、これは大きな流れになると思います。

 この機運を捉え、学習を企業戦略のひとつとして位置づけることを後押しするためにも、CLOの存在は必要だと思います。

――従業員が学習すること自体はこれまでも大切だと散々、言われてきましたが、今なぜ、リスキリングだけではなく、組織内での「リカルチャリング」が特に大切なのでしょうか。