「なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」SNSに潜むウソ拡散のメカニズムを、世界規模のリサーチと科学的研究によって解き明かした全米話題の1冊『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』が日本に上陸した。ジョナ・バーガー(ペンシルベニア大学ウォートン校教授)「スパイ小説のようでもあり、サイエンス・スリラーのようでもある」、マリア・レッサ(ニュースサイト「ラップラー」共同創業者、2021年ノーベル平和賞受賞)「ソーシャル・メディアの背後にある経済原理、テクノロジー、行動心理が見事に解き明かされるので、読んでいて息を呑む思いがする」と絶賛された本書から一部を抜粋して紹介する。

トレンド化されやすいTwitterハッシュタグの共通点とは?Photo: Adobe Stock

トレンドになりやすいトピックとは?

 ハッシュタグは、あらゆるソーシャル・メディアで幅広く使われているが、元々は、2007年8月23日に、自称「デジタル・ノマド」のクリス・メッシーナというツイッター・ユーザーが使ったのが最初だ。キーワードの前に「#」記号をつけてツイートすれば、同じテーマの発言が検索しやすくなるのでは、という発想だった。その日、クリスはこうツイートした。

「How do you feel about using # (pound) for groups. As in #barcamp [msg]?(同じテーマのツイートには、#〔ナンバー記号〕をつけてキーワードを書いたらどうかな。〈#バーキャンプ〉という具合に)」

 その後どうなったかは誰もがよく知るとおりだ。ツイッター社はクリスのアイデアを取り入れ、2009年には公式にハッシュタグをサポートしはじめた。そして2010年には、このハッシュタグを利用して、トピックの人気度の評価、人気の増幅などにも取り組むようになった。その後、ハッシュタグと、トピックのトレンド化などは、あらゆるソーシャル・メディアに広まっていった。

 今では、ハッシュタグ化されたキーワードのなかでもトレンドになっているものはリスト化されてユーザーに通知される。リストの内容は、ユーザーの興味や、現在地などによって変わる。このリストによって、今どういうトピックが新しく、タイムリーで、人気があるかがわかる。経済学者のハーバート・サイモンの言うとおり、人間の注意は限られているのに、情報は増えていく一方、という状況では、このリストは非常に役立つだろう。

 そして、リストの存在によってトレンドは増幅され、人気のあるトピックはさらに人気が高まっていくのである。ユーザーの注意は、その日の最新の最も人気のあるトピックにばかり集中するわけだ。これが「トレンド独裁」という状況だ。トレンドの独裁が文化、政治に与える影響は小さくないだろう。トレンドによって、群衆は賢明にもなれば、愚かにもなり得る(詳しくは次の章を参照)。

 トレンドになりやすいトピックは総じて、注意を引きやすいもの衝撃的なもの感情をかきたてるものだ。私たちに衝撃を与えるトピック、強い感情──驚き、怒り、喜びなど──を引き起こすトピック、ひらめきの元になるようなトピックは短時間のうちに人気を得てトレンドになることが多い。

 トピックはいったんトレンドになると、リスト入りするなどして、多くの人に存在が知らされて、さらに注目度や人気が上がり、強い感情を引き起こす。時には熱狂という言葉がふさわしい状況になることもある。

意図的なトレンド化

 アルゴリズムによってトピックのエンゲージメントの強化、トレンド化をすると、意図しない結果を招くこともある。必ずそれを利用しようという人間が現れるからだ。元々まったく人気のないトピックをあたかも人気があるように見せて、その人気をアルゴリズムに増幅させ、あわよくばトレンドにまでさせようと考える人間が現れるのだ。そうして、本来誰も注目しないトピックに多くの人の注意を向けさせようとするわけだ。

 企業も政府も、政治家も、多くの人の注意を引きたい点では共通している。トレンド・トピックのリストに自然に取りあげてもらえれば一番よいわけだが、とても待っていられないので、ツイッターに1日あたり20万ドルもの大金を支払って(1)、スポンサード・トレンド広告を出してもらうことすらある。

 アルゴリズムによってトレンド化され、注目を集めることで得られる価値が非常に大きいことから、アルゴリズムを操作してでもトピックをトレンド化させたいという動機が生じる。なかには何らかの目的を達するために、自らの人的ネットワークとボットを組み合わせることで、特定のトピックや意見を意図的にトレンド化させるという技を駆使する人もいる。

 何らかの目的とは、たとえば、何かの法案を議会で通過させること、領土(クリミアなど)をある国に併合させること、議会による調査の結果を自分の思いどおりに操作する、といったことがあげられるだろう。ロシアが、2018年に〈#ReleaseTheMemo〉というトピックをトレンド化しようとしたのも、そうした例の一つだ。

参考文献:
(1)Seth Fiegerman, “Report: Twitter Now Charges $200,000 for Promoted Trends,” TechCrunch, February 11, 2013: https://mashable.com/2013/02/11/report-twitter-now-charges-200000-for-promoted-trends/.

(本記事は『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』を抜粋、編集して掲載しています。)