(4)資源への分散投資
日本の大手総合商社は、世界各国のエネルギーや鉱物資源などの事業に投資している。バフェット氏から見ると、米国外の資源に対するエクスポージャーを持つに当たって、良い分散投資先だろう。
例えば、三菱商事と三井物産は昨今、ロシアが設立するサハリン2を運営する新会社に出資するか否かの厳しい選択を迫られた。こうしたカントリーリスクや資源価格自体のリスクは、日本の株式市場では商社の株価が低評価される原因の一つになっていた。
しかし、一つには商社自体が資源投資を分散しているし、投資家であるバフェット氏はさらにその商社を分散投資の対象にできる。そのため、特定の商社1社の株式を持っている投資家よりも、バフェット氏にとって商社の資源投資のリスクは問題として小さい。
なお、近年はやったESG(環境・社会・企業統治)投資にあっては、炭素ガスの排出につながるとして資源株が嫌われ、ビジネス自体としても原油の採掘などに対する投資が手控えられた。しかし、こうした動きが、昨今の(ウクライナ問題以前からの)資源価格の高騰につながっており、結果的に近年のESG投資の成績は無様なものであった。
バフェット氏は投資家としてリアリストなので、ESG投資には距離を置いていたが、日本の5大商社への投資にもその考えが反映されていると言っていいのではないだろうか。
付け加えると、「ESG」は企業評価のそれなりに重要な要素として普通の投資に反映させることが合理的であり、分散投資を「ESG」で制約したり、ましてESG投資に余計な手数料を支払ったりすることは愚かだ。「ESG投資」をうたうテーマ型の投資信託に投資した残念な投資家は、バフェット氏の冷静さを見習うといい。
(5)総合商社の参入障壁
日本の総合商社とその取引先の独特のネットワーク構造を考えると、それぞれの商社のコアビジネスに対して、新規参入が簡単ではないことが分かる。新規参入者に対する防護壁の高さは、バフェット氏の投資を考える上で重要なポイントの一つだ。