「どこで学ぶか(大学)」より
「何を学ぶか(実力)」が重要に

 この図のメッセージは、まず、第1列(IT)ならば、学歴が関係なくなってきている、という点が重要である。

 日立やリクルートが始めたように、ITエンジニアだけを別枠で採用する流れになっており、数値目標達成のため、学歴などほかの基準は無視されやすいからだ。NECやくら寿司は「新卒でも年収1000万円アリ」を宣言し、採用に躍起となっている。

 米グーグル、米アップル、米IBMなど大手ですら、すでに「大学卒」を求めておらず、大学中退でも中卒でも、実力があれば問題なく採用される。ゲイツもジョブズもザッカーバーグも皆、大学中退である。筆者が取材した楽天のエンジニア職正社員も大卒ではなく、専門学校卒だった。少なくともITエンジニアの世界で、学歴は重要ではない。実際に手を動かしてプログラムを作った実績のほうが重宝される。実力社会だ。

 第2列は、現場のニーズが強いため、就職率100%な世界で、少なくとも20年は続くと見られている。たとえば介護職の取材をすると、「同僚で、50歳前後で看護師学校に通い始めた人がいます。待遇が明らかによくて、求人も多いからです。ほかに、以前は医療事務をやっていて30歳過ぎてから看護師の資格を取得した人も職場にいました。実際、ここまで看護師のニーズが強いとは、私自身、現場で働くまで知りませんでした」(40代ケアマネ)と言う人がいた。

 医療福祉系は、高齢者向け施設などで同じ現場にさまざまな職種の人たちが働いている。夜勤のみで働く老人ホームの看護師は、かなりラクそうに見えるという。看護師の待遇は、介護職の1.5倍以上が相場である。

全体像を視野に入れながら
「人材供給の歪み」を探す

 社会のニーズが予想以上に膨らみ、人材の供給が追いつかない歪みは、ミクロで見たらもっとたくさんある。

 たとえば、グーグルが企業戦略としてシフトを進めるテキスト→動画への流れのなかで、検索すると動画が表示されやすくなり、テキストのブログは急速に読まれなくなった。ブロガーが食えた時代は終わり、昨今はユーチューバー全盛だ。周辺の動画編集機器開発人材や編プロ人材などの雇用が生まれている。

 ブームがいつ終わるかわからないが、雇われる力は、こうした市場の歪みによって決まってくるが、これも大きな図のなかでいえば、IT人材のなかの一種だ。つねに、全体像は把握しておく必要がある。

(本記事は『「いい会社」はどこにある?──自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点』の本文を抜粋して、再編集を加えたものです)