「いい会社」はどこにあるのか──? もちろん「万人にとっていい会社」など存在しない。だからこそ、本当にいい会社に出合うために必要なのは「自分なりの座標軸」である。そんな職場選びに悩む人のための決定版ガイド『「いい会社」はどこにある?』がついに発売された。20年以上にわたり「働く日本の生活者」の“生の声”を取材し、公開情報には出てこない「企業のほんとうの姿」を伝えてきた独立系ニュースサイトMyNewsJapan編集長・渡邉正裕氏の集大成とも言うべき一冊だ。同書のなかから厳選した本文を抜粋・再編集してお送りする。

出世を望まない人が知るべき「給料の最低ライン」とは?【トヨタ、三菱商事、ソフトバンク…】Photo: Adobe Stock

平均年収より重要な「出世の壁」ライン

 賃金の上がり方を示す「報酬カーブ」には、PayLater型とPayNow型がある。戦後に成長を遂げた古い日本企業であればPayLater(後払い)型だし、外資系企業や、昭和を引きずっていない新興のIT企業、コンサル会社などは「PayNow」型である。

 PayLater型の会社の場合、バラツキが、どの年齢から大きくなっていくのかは重要だ。出世のハードル(壁)=ちょっとがんばらないと突破できない壁が、どこにあるのか、である。

 なぜ重要かというと、第1に、40代以降に「自分が出世できないこと」に気づいても、取り返しがつかないからである。PayNow型の外資のように、若い段階でバラツキが大きいと、その段階で自分が向いていないことに気づかされるから、別の職種や別の企業に転職して、やり直しがきく。

 第2に、サラリーマンには社内の派閥政治や「上司ガチャ」がつきものだし、事故で怪我を負ったり、がんばりすぎて過労でうつになるなど病気を患うかもしれない。運悪く下位グループに入ったとしても、最悪どこまでは昇格できて、いくらもらえるのか、は保険として重要である。

 特に、バラツキが大きい会社の場合、「平均年収」の数字には、あまり意味がない。知りたいのは、「普通に働いていて到達する年収水準」である。それがわからないと、住宅ローンも組めなくなる。

トヨタの「出世の壁」は1700万円前後

 たとえば味の素では、最も昇進の早い人は、学卒8年目、31歳の年に「L1」への昇格を決め、額面年収700万円ほどになる。社内では、8年目が「イーグル」、9年目が「バーディー」、10年目が「パー」、と表現されるという。ゴルフになぞらえるところが古い大企業らしい。数年遅れで追いつくので、ここでの差はまだ重要ではなく、挽回可能である。

 その後、トップ昇進で13年目、30代半ばで管理職クラスになって、約900万円となる。「課長のランクまでは、総合職なら、ほぼ全員がなれるので、本社は課長以上が半分を超えており、管理職だらけです」(社員)。その上の次長以上(1200万円~)になれる人は最速でも40代前半で、かつては全員なれたが、なれない人も出てきている。つまり、実際に差がつくのはここからだ。数年遅れることはあっても、40代前半までは、入社後20年間、ほぼ同期の間で給料が変わらず、年功序列を維持している。

 したがって「出世の壁」は、味の素なら、1200万円くらいにある。年功序列で1000万円までは堅いが、1200万円を超えるには少しだけがんばる必要がある、ということだ。トヨタなら、普通のがんばりで課長クラスの1500万円くらいは見込める。出世の壁は、その上の次長クラスになるところ、1700万円付近にある。