幹部候補の選抜育成と
若手強化の方法

巨大で複雑な1.5万人企業、コカ・コーラ ボトラーズジャパンを「小回りが利く組織」に変えた人事秘策コカ・コーラ ボトラーズジャパン
執行役員 最高人事責任者 兼 人事・総務本部長
上村 成彦 氏
うえむら・なりひこ/1981年ソニー入社。海外事業本部を経て16年間、海外(クウェート、スイス、シンガポール)にて営業・マーケティングを担当。2009年、アジア・オセアニア・中近東・アフリカの地域統括会社社長を務め、Sony University Singapore Campusを設立。14年、日清食品グループに入社し、執行役員CHO人事責任者として人事全般を統括。18年、コカ・コーラ ボトラーズジャパンに上席執行役員 人事本部長として入社。20年より現職およびコカ・コーラ ボトラーズジャパンベネフィット代表取締役社長。21年、人事総合メディアの『日本の人事部』が表彰する「HRアワード2021」で企業人事部門優秀賞を受賞。 Photo by Yusuke Yuzawa

 当社は統合前の各ボトラー社の出身者や、外国籍社員、専門性スキルを持った中途人財、高いポテンシャルを持っている新入社員など、多様なメンバーで構成されています。

 大きくて複雑な組織を小回りが利く組織にするには、変革を推進するリーダーの人財が必要だと再認識し、「キー人財」を育成するためのパイプライン(組織の各階層、世代間で共通するしくみ)を構築しました。

具体的には、まず役員で構成する全社の人財育成委員会(People Development Forum、PDF)で、(1)キー人財、(2)管理職の次世代リーダー、(3)非管理職の次世代リーダーという3つのカテゴリーを作り、それぞれ人財を選抜しました。

 さらに、その人財を個人能力開発プログラム(IDP)や、企業内大学、若手早期育成プログラム、グローバル・イングリッシュ・トランスフォーメーション(GET)と呼ぶ英語力向上プログラム等の施策を策定して育成しました。特に英語は、海外の成功事例を導入したりする上でも必須の能力なので、グローバルでも通用するレベルに目標を定めました。

 各部門でも開催している人財育成委員会(PDF)は、ポテンシャルを縦軸、現在のパフォーマンスを横軸にとり、9つに分割した「ナインボックス」に分類します。一人ひとりの能力や資質を評価して、それを基に育成計画を考えています。

 特に、各部門でポテンシャル、現状の実力ともに非常に高い位置にある人は、PDFのより上位の組織である全社の人財育成委員会にノミネートし、役員・社長候補として育成します。

 20年に設立した企業内大学「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン」では、リーダーシップに必要なイノベーション、戦略的思考、人的資源管理、効果的なコミュニケーション、自己啓発力(成長意欲)の5つのケイパビリティー(能力)を設定し、事前に評価した上で、プログラムを受講してもらいます。そして、受講前後の評価を比較し、PDCAを回します。研修期間は、部門長で4カ月、課長などの所属長で12カ月、一般職は11カ月です。

 若手社員向けには、20代の管理職を育成すべく、「次世代若手キー人財育成プログラム」を用意しました。20代にはただの研修だけではなく、実力以上の仕事を与え、飛躍的な成長を促すための「タフアサインメント」が必要です。プロジェクトリーダーを任じるなど、いわゆる「修羅場体験」と座学を組み合わせて早期任用を目指しています。

 英語力の向上には、20代から30代を対象に半年間学ぶプログラムを用意しています。たとえば、TOEIC500点の人を650点にするには480時間の学習が必要とされていますが、働きながらそれだけの勉強時間を確保するのは難しいもの。そこで、必ず消化できる時間を設定し、チーム制にすることでお互いに励まし合いながら勉強する環境を提供しています。最終的には役員の前で英語のプレゼンを行います。TOEIC500点以下の人には、基礎力養成の別のプログラムを用意しています。

 20年から始めて今は2期目ですが、継続できており、実際に英語を話せる人が多くなっています。