ショートフィルム人気は
作り手にとって好機
数ある動画コンテンツの中でも、ショートフィルムが注目されている理由を前田氏はこう分析する。
「40分以下のものがショートフィルムと呼ばれますが、それらは昔から若手クリエイターがキャリアの初期に作ることが多い。また、若手に限らず実績のある監督でも商業映画のパイロット盤として短編を作る場合もあります。映画界にとって短編は身近なものであり、100年以上の映画の歴史の中でショートフィルムを撮影する技法は多く生み出されてきました。そう考えると、隙間時間に見られて、それなりにストーリーも練ってあるという完成度の高いショート動画が、映画界にはたくさんあるのです。時代の要請にマッチしたそれらに、現在脚光が当たっているといえます。権利関係はいろいろありますが、アーカイブは無数にあるでしょうね」
さらに近年はiPhoneなどスマホカメラの性能も大幅に向上しており、商業レベルの動画を撮影することも可能になった。機材をそろえるハードルもどんどん下がっているため、熱意と技術があれば誰でも映画を作ることができるのだ。そのため、海外も含めたアマチュア作家たちの高レベルな作品が続々とアップされているのである。
ショートフィルムへの需要増は映画界やクリエイターにとって、もちろんプラスの効果を及ぼすという。
「ショートフィルムはクリエイターにとって成功の足がかりとなります。短編の自主映画がきっかけで有名になる監督は多く、『すずめの戸締まり』の新海誠監督は、その典型。新海監督が会社員時代に作った短編アニメ『彼女と彼女の猫』はCGアニメコンテストグランプリ賞を受賞し、キャリアを築くきっかけをつかみました。また、海外ではデヴィッド・F・サンドバーグ監督が挙げられます。ネットにアップした短編ホラー映画『Lights Out』がバズり、彼はそれを元にした『ライト/オフ(原題:Lights Out)』で長編映画デビュー。以降、『アナベル 死霊人形の誕生』『シャザム!』などを手がける人気監督になりました」
このようにショートフィルムは、作家にとってサクセスストーリーの端緒となるケースが多いのだ。その意味で、ショートフィルムの需要が高まることは、作り手にとって喜ばしいことなのである。