子どもの頃から「親の機嫌」に神経を研ぎ澄ませてきたので、周囲の人が気づかないような些細な変化も、仕草や声のトーンから分かってしまいます。

 親の機嫌を察知して行動することは、子どもの頃のあなたにとって必須スキルでした。
 怒られないため、喜んでもらうため、認めてもらうため、悲しませないため、平和に暮らすため……いろいろな理由があったはずです。

 そのスキルの熟練度は、親と過ごした年数と一致します。
 だから「困っている人を気にするな」というのが、そもそも無理難題なのです。
 実家で30年暮らしてきた人なら「機嫌の察知歴30年」。職業でたとえるなら、もはや職人の領域なのですから。

 でも安心してくださいね。
「気づかないようにする」のは難しいですが、「気づいた後どうするか」は自分で選んでいけます。

「私はどうしたいの?」と問いかけよう

 子どもの頃は困っている親を助けられるのも、家庭内のピリピリした空気を何とかできるのも、あなたしかいなかったのかもしれません。
 でも職場や学校、日常生活など、家庭から一歩外に出た時には、目の前で困っている「その人」を助けられる人はあなた以外にもちゃんといます。

 子どもの頃に磨いたスキルの影響で、みんなが「10回のうち1回」しか気がつかないような出来事に、あなたは「10回のうち9回」気づけてしまうかもしれません。
 そのすべてで「やらなきゃ」「助けなきゃ」と頑張っていたら、あなたが倒れてしまいます。誰かのためにあなたが倒れてしまっては、それこそ誰があなたを助けてくれるのでしょうか。

「気づいてしまう」あなただからこそ、「気づいた後にどうするか」を選んでいきましょう。

 できる時だけで、十分です。
 できない時、疲れている時、できるけどやりたくない時には、しなくても大丈夫ですよ。

「親はどう思うか」が頭をよぎった時には、「だけど私はどうしたいの?」と自分に問いかけてみてください。この繰り返しで、少しずつ親軸の影響は減っていきます。
「それでも親軸が強すぎて困る……」という場合は、「過去の思い込み」があなたを苦しめていないか振り返ってみてくださいね。