エネルギー大国のロシアがウクライナに侵攻して以降、エネルギー地政学は一変した。世界各国がエネルギーの「脱ロシア化」を推し進めた結果、石油や天然ガスなどエネルギー価格が高騰。世界のエネルギー情勢は混沌としている。特集『総予測2023』の本稿では、2023年にも勃発が予想される「世界エネルギーパニック」の大胆シナリオを公開する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
欧州「ガス不足」回避
2023~24年冬は不透明
2023年は世界エネルギーパニックが勃発するかもしれない。引き金になるのは、欧州の「ガス不足」だ。
これまで欧州は、消費される天然ガスの4割をロシアからのパイプライン供給に依存していた。しかし、ロシアがウクライナに侵攻して状況は一変した。
欧州は安全保障の観点、そしてロシアの収入源であるエネルギーに打撃を与えてウクライナ侵攻を阻止するべく、「脱ロシア化」を進めている。とりわけロシア産天然ガスの代替手段として、米国などの産ガス国から海上輸送を経由して供給を受けるLNG(液化天然ガス)の確保を急いだ。
そのかいもあり、欧州のガス在庫は22年10月末時点で、ほぼ満杯になった。欧州は今冬(22~23年の冬)において、ガス不足を回避する見通しだ。
ただし、来冬(23~24年の冬)も乗り切れるかどうかは不透明だ。なぜなのか。
次ページでは、なぜ欧州は「ガス不足」を乗り切れないかもしれないのか。「世界エネルギーパニック」を引き起こす震源地、大胆な予想シナリオを解き明かす。