北京だけで400万~500万人が陽性反応
中国全土で急速に感染拡大中
現実に目を戻そう。前掲の友人によれば、北京ではすでに人口の3分の1、あるいは400万~500万人に陽性反応が出ており、同様に全国でも急速な勢いで広がっているという。中国当局もその直後に「把握できない」ことを理由に無症状患者のデータ公開を中止すると発表したが、実際には無症状患者だけではなく、自分で自宅療養に入った人たちの数すらもすでに把握できていない状態なのである。
昨年、「ウイルスとの共存を目指すべき」と公共の場で論じ、激しい批判を受けたとされる、上海復旦大学付属華山医院感染科の張文宏・主任医師は、経済メディア「財新網」への寄稿文で、「北方の感染者の多くは想像していたほど軽症ではなく、無症状ばかりでもなさそうだ」と述べている。さらに「今ではPCR検査も行われていないので、無症状患者の状態は我々にも分からない」とした上で、「すぐに第1波の感染ピークを迎えるだろう。海外の経験から、オミクロンの第1波は感染者数が比較的多いことが分かっている。その後の第2波、第3波は明らかに第1波より弱まるはずだ」とし、まずは高齢者へのワクチン接種、そしてそれぞれが自分の健康管理に注意することなどを説き、「これはタイムリミット付きの極限の戦いだ。心と力を合わせて、科学を尊重し、知識を共有しよう」と呼びかけた。
あるメディアは、「一人の張文宏を批判した結果、我々はこの一年間を失った」という意見記事を掲載したが、すぐに削除されていた。行政は現場を放棄したものの、ネット上では依然として目を光らせているようだ。中国政府はこのまま事態をほっておくつもりなのか。そしてそこから起きる出来事をまるで措置緩和を求めて抗議した人たちの責任だというつもりなのだろうか?
人びとは一夜にして「コロナゼロ化」から一転して、強制的な「ウイルスとの共存」に追い込まれた。現地に住む友人と話していても、やるせなさと不安を抱えている様子が伝わってくる。張医師が言うように今を踏ん張れば、また自由な生活に戻れる日は来るだろう。しかし、行政の現場放棄、そして再び不安な思いに追いやられたこの経験を、人びとが忘れる日は来るだろうか?